お山の絵本通信vol.165

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『ぼくのかえりみち』

ひがしちから/文・絵、BL出版2008年

今回は読んだあとに、ほっこりとして、そして明日はどんな道を通っていこうかと少しわくわくしてしまうような一冊を紹介させていただきます。

ある日の帰り道、主人公のそらくんはふと立ち止まりました。「きょうは、このしろいせんのうえをあるいてかえろう」と、いつもの帰り道にある白い路側帯の上を通って帰ることにしたのです。家まで続く長い一本の白い線。そろーりそろりと進んでいくと、横断歩道があってジャンプしなければいけなかったり、生き物との出会いについつい寄り道をしそうになったり…。さらには、コーンや大きな犬がそらくんの行く手を阻みます。さて、そらくんは無事に家まで帰ることが出来るのでしょうか。

この絵本を初めて読んだ時、なんてわくわくする帰り道なのだろうと思いました。主人公のそらくんは、小学生なのですが、私の家は小学校から真っすぐ歩いてすぐのところにあった為、寄り道やいつもと違う道を通ることも出来ず、少し退屈だったことを覚えています。中学生になると、日によって通る道を変えたり、こっちから行くとどんな道に繋がっているのかな…と探検しながら毎日帰るようになりました。

先日、みんなで行っているひみつの森での活動の中で、少しスペシャルなことがありました。普段遊んでいるひみつの森の広場より少し奥まで行ってみようか、と足をのばしてみたのです。ずっとずっと気になっていた森の奥。初めての場所に「やったー!」とわくわくの気持ちと「どんなところかなあ…」と少しのドキドキなど、色んな感情でいっぱいの様子の子どもたち。「この道、どこに繋がってるんやろう」「ちょっと怖くなってきたかも…!」「あっちに続いてるよ!」と、色々な声が聞かれました。くねくねの木が道にまたがっていて、「くねくねトンネル!」と言ってくぐったり、越える子もいました。また、いつもより急な坂に「登れるかな…」と少し不安になる子もいて、「○○ちゃん頑張って!」「ここまでいけたよ!」と声を掛け合い、初めての難所も楽しみながら進んでいきました。園へと戻る道も、園に戻ってからも「もっと行きたかった!」「また行こうなあ!」「次はどこまで行けるかなあ」と子どもたちの目はキラキラと輝いていました。

この日はスペシャルな日だった為、わたしもいつも以上にわくわくしていたのですが、ふと思い出すと、行き慣れているひみつの森の広場への道でも、「今日は幼稚園まで走って帰ろうよ!」「こっち側から行っても繋がってるんじゃない?」と言ってみたり、森の道ではなくても、「何色の石の上だけ通って進めるかなあ」など楽しんでみたりして自分たちでスペシャルを作っている姿があることに、この絵本を読んで気付かされました。私たち大人にとっては何気ない普段の道や広場の中でも、子どもたちはそれにとどまらず自分で楽しみを見つけて小さな冒険を繰り広げているようです。それを「今日はこんなことしてるんだよ! 面白いでしょう」と、言葉にしている子もいれば、自分の心の中で、「今日はこうしてみよう」と決めて、ひっそりとしている子もいるでしょう。そんな子どもたちのわくわくする小さな冒険に、一緒に寄り添って、楽しんでいけるように、そして、私もそらくんや子どもたちのように、毎日の中にちょっとしたわくわくを作って過ごしていってみたいなと思いました。

文章/Mika先生