お山の絵本通信vol.150

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『わすれられない おくりもの』

スーザン・バーレイ/文・絵、小川仁央/訳、評論社1986年

今回、紹介させていただく絵本は『わすれられない おくりもの』です。この絵本は、有名な絵本でもありますので、ご存知の方も多くいらっしゃるかもしれません。

お話の中に出てくるアナグマは、賢くて、周りの誰からも頼りにされ慕われていました。しかし、年を取ったアナグマは自分の死を悟り、手紙を書きます。「長いトンネルの むこうに行くよ さようなら アナグマより」という手紙を残し、ある夜、どこまでも続く長いトンネルを浮き上がるように走りながら死んでしまいました。かけがえのない友達を失い、残された仲間たちは悲しみをどうやって乗り越えていくのでしょうか…。仲間の素晴らしさ、互いに生きるための知恵や工夫を伝え合っていくことの大切さを静かに深く語りかけてくれるお話です。

小学1年生の頃、私はこの絵本と出会いました。当時は、“悲しいお話”ということが強く印象に残っていました。それから、先日再びこの絵本に出会い、読んでいると途中、アナグマとの思い出を語り合いながら悲しみを乗り越えようとするモグラやカエルなど残された仲間の姿に、思わず涙してしまいました。お別れがどんなに辛くても、時間が経つにつれて仲間たちが笑顔で思い出すことが出来るようになったのは、アナグマが仲間たち1人1人にあたたかい知恵や思いを残したからではないかなと感じました。また、”悲しいお話”という印象から、お話を通して自分自身の在り方について考え、向き合うきっかけになれるお話、という印象に変わりました。

それから、仲間たちがアナグマとのエピソードを語り合う中で、どの仲間にも出来るようになるまで隣で優しく支えてあげていたアナグマですが、この姿は、子どもたちや先生との関わりと似ているように感じました。そこから、私は小学生の時にスイミングスクールに通っていた頃のことを思い出しました。私は水の中で一回転するターンが苦手で、練習の度に鼻の中に水が入ることでさらに苦手意識が増していく程でした。しかし、そんな私をコーチが「焦らずゆっくりと鼻から吐いてごらん」「その調子!」と全体の練習が終わってからも個別の練習に付き合って下さり、励ましてもらいながらターンを克服することが出来ました。難しいことが出来た時の嬉しさ、楽しさは何年たってもその人の心の中で生き続けていくものだと思っています。

子どもたちはいずれ卒園し、先生とのお別れの時がきてしまいます。限られた時間の中で私自身、アナグマのような存在に近づけるよう、努めていきたいです。そして、子どもたちと共に笑顔あふれる楽しい思い出をたくさん作っていきたいと思います。

文章/Yoko先生