お山の絵本通信vol.141

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『くまのコールテンくん』

ドン・フリーマン/作、まつおかきょうこ/訳、偕成社1975年

この絵本との出会いは、私が通っていた幼稚園からのお誕生プレゼントでした。いくつかの絵本の中から選ぶことが出来、当時の私は「表紙に描いてあるくまさんが可愛いから」というただそれだけの理由で選んだのですが、何度も読むうちに絵本の世界に吸い込まれていって、今では手放せないくらい大切な絵本です。

主人公は、くまのぬいぐるみの「コールテンくん」。デパートのおもちゃ売り場で誰かが自分を買ってくれないかなあと待っていたところに、一人の女の子が立ち止まりました。女の子はコールテンくんを欲しがりますが、おかねをたくさん使ったから、ボタンがとれているからという理由で反対されてしまいます。その夜、コールテンくんはボタンを探しに大冒険をしますが、警備員さんに見つかり、おもちゃ売り場に連れ戻されてしまいます。ところが次の朝、コールテンくんの元にやってきたのは、なんと、昨日来た女の子でした。女の子は自分のお小遣いでコールテンくんを買い、家に連れて帰ります。そして、取れたボタンを付け直してあげると、コールテンくんの 《ともだち》になりました。そんな、くまのお人形と優しい女の子の心温まる素敵な友情のお話です。

この絵本をぜひみんなに見てもらいたいなと思い、子どもたちの前で紹介をし、読み聞かせをしました。知っている人も初めて見る人もお話を聞いているうちにどんどん絵本の世界に入り込んでいく様子が子どもたちの表情から見て感じました。「デパートの中を冒険するところが楽しかった!」「(マットレスのボタンを引っ張る場面を見て)私もくまさんのボタンかと思っちゃった!」「おもちゃの修理屋さんに出したらよかったのに」などと絵本を読み終えるとすぐに、子どもたちの思いが言葉となってお部屋じゅうに広がっていきました。また、「楽しかったから、今度図書館で借りてこようっと!」という声も聞くことができ、とても嬉しく思いました。

私は、子どもたちと共に園生活を過ごしている中で「先生!お家から絵本もってきたよ!」と嬉しそうに持ってくる子どもたちの表情が大好きです。絵本を持ってきてくれるときは、必ずと言っていい程「昨日お母さんに買ってもらったんだぁ!」「この絵本はね、私が赤ちゃんの時からいっぱい読んでもらった絵本だよ」「私の大好きな絵本をみんなに見てもらいたいの!」などと絵本と一緒に子どもたちの絵本に対する思いも乗せて持ってきてくれています。そのため、子どもたちが持ってきてくれた絵本の読み聞かせをするときは、持ってきてくれた人の思いを汲み取りつつ、いつも以上に大切に読むようにしています。また、読み聞かせの時間で大事にしていることの1つとして、出来るだけ多くの絵本と出会って欲しいなという思いもあります。

私は、子どもたちが持ってきてくれる絵本の中で、懐かしいなとしみじみ感じる絵本もありますが、こんな面白い絵本もあるんだなと今になって発見することもたくさんあり、子どもたちと一緒に私自身も楽しみながら読み聞かせをさせてもらっています。これからも 《ぼく、わたしのお気に入りの絵本》を見つけつつ、出来るだけたくさんの絵本に触れられるよう、子どもたちと一緒にきっかけ作りが出来たらなと思っています。

文章/Youko先生