お山の絵本通信vol.138

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『せんせいといっしょ』

マリアン・クシマノ・ラブ/文、市川里美/絵、木坂涼/訳、BL出版2013年

“せんせいは わたし あなたは せいと ここに きたら あなたは わたしの こどもなの”この言葉から始まるこの絵本に私は一気に引き込まれました。引き込まれたというより、共感出来たと言った方がいいのかもしれません。動物たちの幼稚園が描かれているこの絵本は、物語というよりは1ページ1ページに先生の気持ちが書かれている1冊です。冒頭の1文に共感出来たというのも、私が子ども達に伝えている言葉と重なる部分があったからです。毎年、クラスが変わる4月の最初のお始まりの時には「幼稚園でのお母さんはちなみ先生だよ。だから楽しいことや嬉しかったこと、悲しいことや困ったこと、なんでもちなみ先生にお話しして欲しいな。」と子ども達にお話しします。年長さんになると、『えっ!先生がお母さん〜!?』といわんばかりに照れて笑う子ども達もいるのですが、この言葉で少しでも安心してくれる子ども達がいてくれればなと思っています。そして、私自身これからも大切にしていきたい思いです。「先生聞いて!」とにこにこで色んな楽しかった話や嬉しかった話をしてくれることが多いですが、勇気を出して「あのね・・」と、困ったことや悲しかったことを話してくれることもあります。その時は解決策を考えると共に、自分の思いを話してくれてありがとうという気持ちになります。なかなか言いにくいこともきっとあるはずなので、出来るだけ気持ちを聞いてあげたいなと思っています。

また、この絵本を読んでいくと心に残る言葉が他にも沢山出てきました。“チャリン チャリン チャリン ベルがなると あなたのこえも ひびきだす げんきいっぱい いい ねいろ”というこの文もとても心に響きました。私は、子ども達の声がたくさん響いていることが大好きです。クラスの中にいてももちろん感じるのですが、朝、私がお部屋に向かう時にクラスから聞こえてくる子ども達の声や、階段を上がってくるときに遠くから聞こえて来る声にとてもパワーをもらえます。私は、小学生の頃から幼稚園の先生になることが夢でした。中学、高校と進むにつれてその気持ちは大きくなり、短大時代には母園に実習として行かせて頂きました。その頃は、実習が終わってからも自転車などで近くに来た時は幼稚園の前を通り、子ども達が楽しそうに遊んでいる声を聞いてはほっこりしていた自分を思い出します。それだけ子ども達の声には力があるのだなと改めて思いました。

そんなことを思いながらページをめくっていくと、次はこんなページがありました。“ほんをよむと あなたのめが みるみる おおきく みひらいて せんせいもいっしょに たのしくなるの もっともっと たくさん ほんを よみたくなるのよ” これは本当にその通りだなと思いました。絵本や紙芝居なんかを読んでいるときの子どもたちの顔はいつも真剣で、ぐっとお話に入り込んでいるのが伝わってきます。また、面白いところでは「わっはっは!!」と笑ってくれて、こちらまで楽しくなります。そしてもっともっと読みたくなります。私も幼稚園の頃は絵本が大好きで、お帰りの時などに先生に読んでもらえる空間がとても居心地良かったことを覚えています。今でも、他の先生がお話を読み聞かせてくださっている空間が何だかとても好きで、子ども達と一緒に子どもの頃に戻った気持ちで聞いているような気がします。最近は、絵本や紙芝居を出さずに昔話などをすることもありますが、真剣に聞いてくれている子ども達の顔を見ると嬉しい気持ちでいっぱいになります。

そして、絵本の最後に近づくと、こんな言葉が綴られています。“せんせいが つちなら あなたは つやつや ちいさな たね ぐんぐん どんどん おおきくなるの せんせいは それが とっても たのしみ” この言葉はとても心に残りました。子ども達の成長は本当に早くてそしてとても大きいものだと毎日感じさせられます。この間竹馬の練習を始めたと思ったら、もう1人で立てるようになっていたり、うんていが3つまで進めていたところが半分、そして最後まで1人で行けるようになったり、悩みながらもしっかりと絵画を完成させることが出来るようになったり・・・。 また、卒園しても「先生!」と遊びに来てくれる子はたくさんいて、毎日少しずつ成長している子ども達の姿を見ていられることは嬉しくもあり、そして楽しみでもあります。先日卒園児のお友達から頂いたお手紙には、「1年○組になったよ!」「一輪車の練習をしているよ!」「お友達がいっぱい出来たよ!」と書いてあってとても嬉しく思いました。幼稚園、クラス、そして先生が土になって、子ども達がどんどん大きくなっていけるように見守っていきたいです。そしていよいよ始まった行事いっぱいの2学期を子ども達と思いっきり楽しんで過ごしたいと思います。

文章/Chinami先生