お山の絵本通信vol.118

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『まっくろネリノ』

ヘルガ・ガルラー/文・絵、矢川澄子/訳、偕成社1973年

私が今回紹介させて頂く絵本は「まっくろネリノ」というお話です。

ネリノは色とりどりの家族の中でただ1人まっくろ。まっくろだから、という理由で綺麗な色をした4人の兄さん達は遊んでくれず、いつもひとりぼっちでした。夜、皆が眠ってから「悲しいなぁ…。」と考える毎日。ネリノは綺麗な色になりたくて、お花に聞いてみたり、お薬を飲もうとしてみたり…。

そんなある日のことです。兄さん達が行方不明になってしまいました。あまりにも綺麗な色なので、捕まえられてしまったのです。そこで、ネリノは自分がまっくろということを活かし、1人で助けに向かいます。闇に紛れ、無事に兄さん達を助けることが出来、それからは兄弟仲良く暮らすようになりました。

この絵本は、私が幼稚園の年長組の時に、生活発表会で劇をした作品で、とても思い出深い作品です。私はむらさき色の兄さんの役をしたのですが、約20年経ってもむらさき色の帽子をかぶり、大きなカゴの中に入って、「助けてー!!」と言ったことを覚えています。恥ずかしがり屋で、人前でお話をすることが苦手だった私はなかなか台詞を言うことが出来ず、小さな声だったり、お友達に手をつないでもらい、力を分けてもらいながら練習していたそうです。家では大きな声で言えても幼稚園では言えず、くやしくて涙を流した日もあったと祖母が教えてくれました。それでも少しずつ勇気を出し、本番にはお友達に手をつないでもらいながらも頑張ることが出来ました。

このお話を大人になり、読み返す中で個性の大切さ、勇気を出すことの大切さをとても感じました。1人だけまっくろということで仲間に入れてもらえなかったネリノ。自分の色が嫌でどうにか変えようとするネリノ。きっとネリノ自身も自分のことを好きになれず、くやしい思いをしていたのではないかと思います。でも、自分で勇気を出し、自分を受け入れ、兄さん達を助けに行ったネリノは誰よりも強く、誰もよりも優しい心を持っていたのだなと思いました。

“勇気を出してみよう!”とよく子ども達にお話をすることがありますが、ふと振り返った時に、自分はどうだろう、自分に自信を持てているのかなと思う時があります。私はこのお話を通して、自分自身を振り返ることが出来ました。お話の中に出てくる「ぼくならだいじょうぶ」「ほらね、もうまっくろくろだってちっともかなしいことなんかないんだ」という言葉は、私の心の中で何回も繰り返され、ぜひこうありたいと思う姿でした。

心優しいおやまの子ども達。優しいからこそ“ぼくなんか”“わたしなんて”と一歩引いてしまう姿が見られることもあります。一緒に過ごしていく中で、“勇気”を出し、自分を好きになり、かけがえのない自分というものを皆で大切にしていけたらと思います。

文章/Yuuka先生