お山の絵本通信vol.117

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『おともだちになってね』

岡本一郎/文、つちだよしはる/絵、金の星社1999年

「お友達になってね」「一緒に遊ぼう」──この言葉は私が幼かった時、恥ずかしくてなかなか口に出せなかった言葉です。一緒に遊びたい気持ちは、たくさんあるのに恥ずかしいという気持ちの方が強く、あと一歩の勇気が出なかったことを覚えています。しかし、勇気をたくさんたくさん振り絞って、自ら「一緒に遊ぼう」と発したことにより、友達ができた時の喜びも覚えています。今回ご紹介させて頂く絵本は、幼稚園時代の私と同じ思いを持つ主人公が出てくるお話です。

とんがり山に住むくまのフー≠ヘずっと一人ぼっちで暮らしています。とんがり山には、深い谷に架かるつり橋があり、フーは怖くてなかなかその橋を渡ることができません。いつも「橋の向こうには誰が住んでいるのかな」と思っているのでした。

ある日のこと寂しいフーは、自分の誕生日用に焼いたケーキを抱えて、「お友達を作るんだ!!」と深い谷に架かるつり橋を勇気を出して渡ります。「僕とお友達になってね」とは言えなかったフーでしたが、ケーキを渡すことには大成功です。そして、勇気を出してつり橋を渡ったフーのプレゼントは、初めてできた友達と森のみんなで作ってくれたカレーライスでした。フーにとっては、最高の誕生日プレゼントになったことと思います。また、ケーキやカレーライスなどは一人で食べるより、みんなで一緒に食べた方が何百倍も何万倍もおいしかったことだろうと思いました。

この絵本より、友達を作る勇気はもちろんのこと、友達や仲間といった存在の大切さを改めて感じました。友達、仲間がいることにより、励まし合い、喜びを分かち合うことができます。そして、時には衝突することもありますが、その中で痛みを知り、より一層深い関係を築き上げていくことができるのではないでしょうか。友達・仲間がいるからこそ、感じ取ることができる気持ちに感謝し、大切にできるようにしていきたいなと思いました。

文章/Tomomi先生