お山の絵本通信vol.116

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『さかなは さかな』

かえるの まねした さかなの はなし

レオ=レオニ/文・絵、谷川俊太郎/訳、好学社1975年

私が紹介する一冊は『さかなは さかな』です。小学校の教科書に出てきた『スイミー』の作者の絵本だということや、この作品を知った幼い頃に『さかなは さかな』なんて当たり前だ!と思った強い印象から、タイトルだけは覚えていました。今回皆さんに紹介する絵本を考えている時に偶然ゆき組のお部屋で見つけたので、読んでみました。

池に住んでいるおたまじゃくしと小魚はとても仲良しでした。しかし、おたまじゃくしはかえるに成長し、やがて住んでいた池を出ていきます。しばらくして小魚から成長した魚のところへ再び戻ってきたかえるが、池の外で見てきた『世の中』の話をします。その想像膨らむ話にどんどん好奇心が湧き、魚も池を飛び出していきますが、すぐに息が出来なくなり、元の池の中へ戻ってくることになります。

表紙の絵にもあるとおり、魚が想像している見たことのない外の世界の生き物はとてもユニークで、鳥や牛、人間の姿は、思わずクスッと笑ってしまうものばかりです。ページをめくるたび、色とりどりの生き物たちが次々に飛び出してくるので、読んでいた私はワクワクした気持ちになりました。

知らない世界や周りのものに憧れ、自分の目で見てみたい、行ってみたいという魚の思いには共感出来るものが多々あります。私自身、高校卒業とともに京都に出て学ぶ決意をした頃のことを懐かしく思い出しました。

しかし、今の私は親元を離れて生活をしています。そのため、かえるの気持ちにもおおいに共鳴することができました。新しい世界へ飛び出したかえるは、魚と再会することで元いた場所を大切に思うことが出来たでしょうし、昔の友達に『世の中』の話をすることで、今いる自分の居場所の素晴らしさを再認識出来たのではないかと思っています。

この絵本は『さかなは さかな』というタイトルですが、『かえるはかえる』として読み返しても、それぞれの暮らしや姿に素晴らしさがあることを感じさせてくれます。読み終えて改めて自分自身を見つめ直すことや、今いる環境の有難さを考えることが出来たように思います。「自分は自分」という気持ちを持って生きることの大切さ、素晴らしさを教えてくれた貴重な一冊になりました。

文章/Asami先生