お山の絵本通信vol.109

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『つみきのいえ』
平田研也/文、加藤久仁生/絵、白泉社2008年

私が今回紹介させて頂く絵本は『つみきのいえ』です。ふと入った本屋さんで表紙のほのぼのとした柔らかい絵に惹かれ、この絵本を手に取りました。読んでいく内にどんどんとお話に惹き込まれ、心温まるこの絵本がすぐに大好きになりました。

この絵本の主人公は海の上に立つ変わった家に住んでいる腰の曲がったおじいさんです。おじいさんが住んでいる町は海の水がだんだん上に上がってくる所にあります。その為、お家が沈んでしまわないように、家の上に家を建て、つみきのように重ね、暮らしてきました。ある日、また海の水が上がってきたので、おじいさんは新しい家を作り始めました。作っていく途中、おじいさんは大工道具を海の中に落としてしまったので、潜水服を着て取りに行きました。下の階へと進んでいく度に、その家での大切な思い出が蘇るおじいさん。更に下へと潜っていくと……。

私はこのお話を読み、今までの自分を振り返ってみました。サッカーをしたり、大縄跳びをするのが大好きだった幼稚園の頃の家。ドッジボールや合唱に力を入れて取り組んだ小学校時代の家。ソフトボールや弓道の部活動に勤しんだ中学校、高校時代の家。実家を出て一人暮らしを始め、色々なことを体験しながら幼稚園の先生になる為勉強した大学時代の家。様々な形や色の家がいくつも積み重なり、今の私がいるのだなと思いました。そして、これらの家にはこの絵本のおじいさんにとってのおばあさん、娘、孫のように、私にとっても大切な人達が見えてきました。この自分の経験と出会ってきた大切な人達がいて、私のつみきの家は出来ているのだなと思いました。

今、子ども達は何階建の、どんなお家に住んでいるのでしょうか。きっとキラキラと輝くすてきなお家に住んでいることと思います。これからも積み重なっていくお家の中にこのお山で過ごした思い出いっぱい笑顔いっぱいのお家が建てられることを願っています。

文章/Yuuka先生