お山の絵本通信vol.104

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『14ひきのかぼちゃ』
いわむらかずお/文・絵、童心社1997年

私の家族は、祖父・祖母・父・母・2人の兄・私の7人です。私は、田畑や山に囲まれた豊かな自然の中で育ちました。祖父と祖母が農業を行っていた為、幼い頃は、よく手伝いをしていたように思います。田畑には、春になると、たまねぎ、春キャベツ、ほうれんそう。夏になると、トマト、きゅうり、スイカ。秋になると、お米、さつまいも、だいこん。山へ行くと、くり拾い、しいたけ採り。その他にも、四季を通して色々な種類の作物を育てて、収穫していました。

大人になるにつれ、手伝う機会が少なくなりましたが、『14ひきのかぼちゃ』の絵本と出会って幼い頃の自分と家族を思い出し、自分の育った環境がとても好きであることを感じるようになりました。このお話は、14ひきのねずみの家族が、土を耕し、畑を作り、かぼちゃの種いのちのつぶ≠植えます。なかなか出ない芽に話しかけたり、草の布団や枯れ草を敷いてあげ嵐の中、かぼちゃを守り、家族皆で育てていきます。最後には、かぼちゃを収穫して、かぼちゃのお料理が食卓に出てくるお話です。

絵本を開くたびに、私も家族で野菜やお米の収穫をしていたことを思い出しますが、中でも一番心に残っているのが、ねぎの収穫と出荷の準備です。当時は祖父と祖母が主に農業を行っており、父と母は仕事がお休みの時や早く帰宅した時に手伝っていました。上の兄は大学生で家を離れており、下の兄は部活、私はソフトボールをしていたので、いつも帰宅が遅く家族皆が集まる時間が少なかったと思います。ちょうど、その頃にねぎの収穫があり出荷することになって、皆で手伝うことになりました。その日は、タイミングが良く、上の兄が帰省して、下の兄も私も早く帰宅していたので、久しぶりに家族7人が集まりました。ねぎの収穫は祖父と祖母がしていたので、私達は出荷が出来るように準備していきました。父と母は、ねぎを洗う。2人の兄と私は、ねぎの皮をむく。祖父と祖母は、ねぎを仕分けし、束にしてまとめるといった流れ作業で行いました。夕方から始め、だんだんと薄暗くなり、ライトをつけ、皆でねぎを囲み出荷の準備をしていくことが、とても楽しくワクワクしたことを思い出します。

出荷する準備が出来、祖父・祖母・父・母が「手伝ってくれてありがとう。」と言ってくれたことも嬉しかったのですが、何よりも皆で集まり、準備出来たことが一番嬉しかったことを覚えています。

家族が集まって、色々な話をしました。大学・高校・小学校の話。山・畑の話。ねぎについて話をする中で、ねぎの皮をむいていくと手がねぎ臭くなるので、「あ〜臭くなるー!!」と笑いながら話をしていたことも覚えています。

家族と一緒にいる時は何も感じませんでしたが、親元を離れて生活をするようになり野菜を育て、収穫する大変さや、育てている人の思いが沢山込もっていること、食べ物の大切さを改めて感じることが出来るようになりました。祖父と祖母はよく私に言っていたのが「種はとても大事で貴重な物なんだよ。」という言葉でした。当時の私は、あまり理解が出来ませんでしたが、大人になって祖父と祖母の言葉の意味がようやく分かったように思います。絵本の中にも出てくるいのちのつぶ≠、私も大切にしていきたいなと思います。

私にとって、この絵本は私の家族と重なる部分があり、幼い頃の自分と家族を思い出させてくれる1冊です。

文章/Noriko先生