お山の絵本通信vol.95

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『パパとママのたからもの』

 サム・マクブラットニィ/文、アニタ・ジェラーム/絵、小川仁央/訳、評論社2004年

私には上に兄、下に妹がおり3人兄弟の真ん中で育ちました。この絵本と出会った時、3匹のこぐま達が自分の幼い頃と重なり、『お兄ちゃんは良いなあ』『妹は良いなあ』と幼いながらにふと感じた時の事を思い出しました。

このお話は3匹の兄弟くまのお話です。絵本に出て来るくまのパパとママは、皆を寝かしつける時、いつも、

 『おやすみ、 せかいで いちばんかわいい こぐまたち!』

と言います。

そんなある日、こぐま達はそれぞれにふと心配になります。

お兄ちゃんくまは

 『ぼくは ほかのこみたいに かわいくないかもしれない。
 だってみんなは はなの まわりがしろいけど、ぼくは そうじゃない。』

そして、お姉ちゃんくまも思います。

 『パパは あたしより ほかのこたちのほうが すきなのかも。
 だって、あたしだけ おとこのこじゃないもの。』

そして、3番目のぼうやも心配に思います。

 『ぼくが いちばん ちびすけだ。』

そして、3匹は尋ねます。

 『ぼくたちの なかで、 だれが いちばんすきなの? 
 みんなが いちばんには なれないもの。』

と・・・。

するとくまのパパとママは答えます。

 『おおきくても ちいさくても おんなじに あいしているよ。
 そうさ、きみたち みんなが パパと ママの たからものなんだ!』

と一人一人抱きしめながら・・・。

この絵本を読んだ時、母がよく『3人共同じ様に育てたつもりだけど、何でこんなにそれぞれ性格が違うのかしら。おもしろいわね!』と言っていた事を思い出しました。確かに私達は見た目も性格もそれぞれです。大人になった今は、自分と違う所が兄らしさであり、妹らしさである、とよく分かるのですが、幼い頃は『兄は男の子でいいなあ』とか『妹は一番下でいいなあ』と羨ましく思う事も沢山ありました。

両親は同じ様に愛してくれていたのですが、幼い私はこのこぐま達の様に、ふと心配になり兄や妹と比べてしまった事がありました。しかし、そんな不安に思っている私に気付き、母は『まみちゃん、大好きよ。頼りにしているわね! お姉ちゃん!!』とギュッと抱きしめてくれた事がありました。その母の一言で、不安な気持ちが一気になくなり、優しい気持ちになれた事を今でもほんのり覚えています。確か、妹が生まれ、やきもちを妬いていた時の事だったと思います。

今では、3人兄弟の真ん中に生まれた事をラッキーに思っています。なぜなら、兄からは妹として優しくしてもらい、妹には姉として優しくしてあげる事が出来、どちらも経験出来るからです。幼稚園の子ども達が、園でお兄ちゃんやお姉ちゃんに優しくしてもらった事を、小さいお友達にしてあげる様に、私は家の中でこれから先もずっと妹として、姉として両方を経験していけるのですから。

そしてまた兄は兄で、妹は妹で、それぞれに良かったと思う事がきっと沢山あるはずです。

ふと不安になった時、人と比べてしまう事もありますが、人と違う事は当たり前の事です。例え何かが人と違っていたり、出来なくても、あるがままの自分をそのまま認めて愛してもらえる事で、きっとみんな違ってみんな良い! という事に気付けるはずです。

子ども達と過ごす毎日の中で、あるがままの子ども達を認め、一人一人の素敵な所を言葉に出し沢山伝えていく事が、今の私に出来る事かなと日々感じています。

私はこの絵本の最後の言葉が大好きです。

 『こうして、せかいじゅうで いちばん かわいい こぐまたちは、
 しあわせ いっぱい、ねむりに おちていきました。
 だって、やっぱり うっとりする こたえだったからです。』

絵本のパパやママの様に “うっとり” できる言葉を、沢山伝えられる人でありたいと思います。

文章/Mami先生