お山の絵本通信vol.40

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『まほうのえのぐ』
林明子/作、福音館書店1993年/1997年

[まほうのえのぐ

『まほうのえのぐ』──この絵本は私が幼稚園の先生になる前の実習で子どもたちに読んだ一冊です。林明子さんという方の描かれる優しく温かいタッチの絵が好きだったこと、そして絵の具を使った活動を考えていて少しでも子どもたちに絵の具に興味を持ってもらえればいいなと思い選んだように思います。また、何よりも子どもたちが大好きな『まほう』という言葉に私自身が魅かれ思わず手に取りました。

このお話は主人公の女の子がお兄ちゃんの『魔法の絵の具』を借り、お兄ちゃんみたいに…と真似をしながらたくさんの絵の具を出し、画用紙に描いていきます。自分の好きな色はもちろん、あれもこれもとたくさんの色を出し塗っているうちに…と。「一体どうなるのかな?」と問いかけられています。大人なら「あーあ。混ざって大変」と思う所かもしれませんが、子どもたちは色が混ざっていくことも大好きなようで「おもしろい色になったね」と言ってくれたことを覚えています。そして、最後には森の動物たちと一緒に楽しくスケッチ大会が始まり、主人公の女の子が完成させた絵を子どもたちが見ると「すごい」「私も描きたい!!」「ぼくもまほうのえのぐが欲しいなー」と言ってくれたことも思い出しました。

初めての実習だったので、絵本を読む練習を何度も何度もしましたが、きっとつたない読み聞かせだったと思います。しかし、絵本を読み終わった時の子どもたちの笑顔、驚いた顔そして絵の具に興味を持ってくれたこと「先生おもしろかったよ」と言ってくれた言葉は何よりもうれしく宝物となっています。私自身昔、父や母に読んでもらった絵本も心に残っていますが、自分が読んで読み手の反応、言葉も心に残り大切な絵本が一冊また一冊と私の中に増えていくような気がします。これからもそんな絵本を子どもたちと共に増やすことができればいいなと思っています。また、親子でもそんな思い出を作っていってもらえればいいなとも思っています。

文章/Tomomi先生