お山の絵本通信vol.30

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『はじめてのおつかい』
文/筒井頼子、絵/林明子、福音館書店1976年


本屋さんで表紙の絵のかわいらしさに魅せられ、手に取った絵本でした。『はじめてのおつかい』とまず題名を見て、「どんな所におつかいするのだろうか」と胸をワクワクさせながら、一ページずつ開いていったことを思い出します。

主人公のみいちゃん≠ェお母さんに頼まれて、お金を持ち、牛乳を買いに行く道のりがえがかれています。

今思えば、何でもないことですが、当時の私は、「店までの道のりは大丈夫なのかな」「お釣りはきちんともらえるのかな」「お金を落としたりはしないのかな」と思って読んでいました。そして、「牛乳ください」の一言が大きな声で言えない時も、「ガンバレー! ガンバレー!」と主人公のみいちゃんを応援し、ようやく買うことができた時には、「やったー!!」とうれしくなったことを覚えています。

それから、何度も母に読んでもらい、「私も買い物に一人で行きたい!!」と言って家から目と鼻の先にある、お豆腐屋さんに出掛けたように思います。お金をギュッと握りしめ、買う物を何度も何度も口ずさみ、ドキドキしながら行ったことは、今でも記憶に残っています。買い物後には、父・母はもちろん祖父や祖母にも「すごかったね」などとたくさん褒めてもらい、自分の中で一つお姉さんになったような気がしました。

この絵本で、私は、「買い物へ一人でも行けるのだ」という勇気をもらえたように思います。そして、実際に一人で買い物へ行ったことにより、達成感を持ち、自信へとつなげることができました。一つ自信になると、色々な事への挑戦も芽生え、ひとまわりもふたまわりも大きくしてくれたのが、この本でした。

いつか自分でやりたい事があれば、危ないばかり言うのではなく、挑戦する気持ちを大事に育ててあげて欲しいと思いました。

文章 Tomomi先生