『おじいさんの小さな庭』


パッと目に入る表紙。絵はイギリス人挿絵家バーナデット・ワッツで、おじいさんが庭仕事の合間に腰をおろして一服しているところですが、はじめて見た時には、今はもう亡くなった私の祖父の姿と重なりとても懐かしく感じたものです。


私は子どもの頃に、家の裏で畑仕事をしていた祖父を眺めたり手伝ったりしながら長い時間を畑で過ごしていました。大きな納屋には大小さまざまな種類の農具が整然と並べてあり、畑には季節ごとの野菜や果物が植わっていました。キャベツ畑の季節にはモンシロチョウがたくさん飛んで、また、食用に間引いたあとの若菜の残りが成長して、黄色一面の菜の花が咲いた風景が春の畑の大好きなシーンとして今も心に残っています。

この絵本に出てくる、“おじいさんの庭”の風景も、眺めているだけで心が癒され幸せな気持ちになってくるのです。


「おじいさんの小さな庭」は、高価な球根花の咲きそろう庭園ではなく、自然の宿根草や多年草からなる心温まる場所で、小鳥や小動物がいろいろやってきます。
おじいさんは花や小鳥の気持ちもわかるのですが、ある時、庭のいちばん小さなヒナギクが「隣のお金持ちが持っている大きな庭へ行きたい。豪華なバラやユリの間で咲きたいの。」と言って聞かなくなりました。

おじいさんは悲しくなりますが、ヒナギクの思いをかなえたいと、夜中にそっとお隣の庭に植えてあげました。果たして、ヒナギクは幸せになったのでしょうか。


ある事が起きました。おじいさん,ナイチンゲール,仲間の花や虫たちがとても心配しているその様子は、星空の下のおじいさんの庭で、静かなナイチンゲールの歌声とともにあまりに美しいブルートーンで描かれています。


月の光に照らされみんなが眠りについた夜、ナイチンゲールの歌だけが静かに響きます。
“おやすみ”の前にぜひ読んであげたい、おすすめの絵本です。
文章 いくこ先生
―――ゲルダ・マリー・シャイドル/文
     バーナデット・ワッツ/絵
     ささきたづこ/訳
     西村書店/1987年
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