「(君子は)和して同ぜず」は論語の言葉です。「(小人は)同じて和せず」と続きます。

「和して同ぜず」。一人一人の個性・主体性が生かされながら、同時に全体が調和に包まれていること。言うならば、本園が目指す子どもたちの世界がそれです。

「同じて和せず」。全体が「右向け右(あるいは左向け左)」と「同じ」方向を向くよう強いられ、その結果、表面的には「同じ」に見えても、全体に本当の意味での調和は守られていない、ということ。このようなことを孔子が述べています。

教育の理想がどういうものか、短い言葉で教えてくれます。

この言葉をヒントに、以前「山の学校」の機関誌(山びこ通信)にエッセイを書きました。

小学校以上の学校教育に関するものです。「共通テスト」の勉強は大事ですが、そればかりに目が向くと、読解力、表現力が育たない弊害が懸念されます。

我が国は、「これが近道!」とか「こうすれば勝ち!」という情報が広まりやすく、みながそれに群がる傾向があり、教育も例外と思われません。

「共通テスト」さえできれば道が開けるというのはそのとおりですが、「それ」を目指して他を犠牲にするやりかたは、たとえるなら、ペンシルビルを建てるようなもの。本当の高さはすそ野の広さがおのずともたらすもの。

何事もバランスが大事です。とくに、教育はバランスが大事です。

養老孟司氏は「子ども時代は体を動かすことが一番」という趣旨のことを言われていますね。私も同感で、小学校以上の勉強については、本を読んで楽しむ経験を広げ、深めることがとても大事だと思います。

>>「和して同ぜず」──――読書力を身につけるために

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