2014-02 絵本通信 『ねえ、どれがいい?』

『ねえ、どれがいい?』

ジョン・バーニンガム/文・絵、評論社1983年

今回ご紹介するのは、あらすじのある読み聞かせの本ではなく、ユニークな問いと答えから成る楽しい「仕掛け」タイプの絵本です。ページを開けると、そこには想像をくすぐる挿絵とともに、子ども泣かせの「究極の選択」が用意されています。

例えば、もし「ゾウにおふろのおゆをのまれちゃう」、「ワシにごはんをたべられちゃう」、「ブタにふくをきられちゃう」、「カバにベッドをとられちゃう」としたら、「ねえ、どれがいい?」といった具合にです。

それぞれの選択肢をイメージ化した挿絵は、どれもユーモラスでとぼけた味わいがあり、絵を見ているだけでも時間を忘れ、空想の世界に引き込まれます。

どのページを開けてもまともな選択肢は一つもなく、子どもはどれが一番「まし」かを真剣に考えます。この「真剣に」というのが最大に重要なポイントで、大人は子どもが「えーっと。うーんと」と一生懸命考える姿を見ているだけで和めます。

「ぼく(わたし)はこっち。だって・・・だから」。答えを決めた子どもが語り始めたら、大人も相づちをうちながら、筋書きのないおしゃべりに花を咲かせましょう。一緒に絵本を見ながら交わす他愛のないおしゃべり。これこそ、作家が狙い、目指したものだと思われます。

日常をふりかえれば、大人はどうしても常識を頼りに意味を求め、無意味を排除しがちです。空を見る回数は減り、白い雲の形を見て何に見えるかを考えることもなくなります。でも、子どもは本来「非常識」や「非日常」が大好きです。そして、大人も本当は同じなのです。銀世界で子どもに雪を投げられても、笑顔で投げ返すことのできる雪合戦しかり。

作者の繰り出す不意打ちの連続は、それを楽しむ心のゆとりさえあれば、読む人をみな笑顔に変えてくれます。肩の力を抜いてページを開ければ、大人の童心と子の童心が共鳴するような、リラックスした心地よい時間が流れることでしょう。

(山下太郎)

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