『今どきの中学生は!というけれど―チャレンジ体験報告』

去る11月6日から8日までの3日間、近衛中学2年生の生徒さん6人が「生き方探求・チャレンジ体験」と銘打って、当北白川幼稚園で学習をしていかれました。学習といいましても幼稚園のことですから、園生活との関わりを通して幼児と仲良くなったり、先生の仕事の大変さを身近に感じてもらうことが、主な目的でした。

園としても初めてのことなので、どのように受け入れてよいのか戸惑いましたが、ともかく初めが肝心ということで、事前のオリエンテーションの際に小1時間、幼児に接する心得などをしっかりとお話したのですが、そのとき驚いたのは、6人の生徒さんがその間ほとんど身じろぎもせず、実に真剣な眼差しでさいごまで聞き入ってくれたことです。昨今の中学生は、授業中私語が多いのでやりにくいと聞かされていただけに、初っ端から認識を新たにさせられる思いでした。

第1日目の朝、8時15分から約30分間、6人の生徒さんの学習の第一歩は、園庭から石段の道、園舎と園舎の間の階段の道を、それぞれ分担を決めて清掃作業をしてもらいました。中には初めて箒を手にすると覚しき生徒さんもいて、かなり苦労をしていたようでしたが、園児たちが上がってくる頃には落ち葉もすっかり取り除かれていました。

さて、お部屋での様子はといいますと、どのクラスも初めは緊張いっぱいの生徒さんと、物珍しげな園児たちとの間がどことなくぎこちなく、お互いにどのように近づけばよいのか、ためらっている風でした。そのうちだんだんと、子どもたちの方から声を掛けるようになり、それに対してどの生徒さんも、幼児の人格を尊重するといった面持ちで、とても丁寧に、優しく応答してくれるので、お兄さんやお姉さんとの垣根も取れ、しだいに打ち解けてくるようになりました。

年少組の子どもなどは、お姉さんの背中によじ登ったり、ぶら下がったり、帰り際には「明日もまた来てや」と声を掛けたりしていました。2日目ともなりますと、どの生徒さんもすっかりクラスのなかに溶け込んで、保育中は、先生の保育の妨げにならないよう配慮していましたが、遊びの場面になると、泣いている子を慰めたり、けんかの仲裁にも入ったりして、先生のよい補助をしてくれるようになっていました。

ところでただひとり、2日目もなお恥ずかしそうにしている生徒さんがいました。6人中、唯一男性のM君です。大変努力はしているようなのですが、とくに女の子にいけません。女の子の方も恥ずかしそうに傍へ寄ろうとしません。いまどき珍しい純な場面に、担任の先生も大いに目をパチクリ。そのM君も、3日目になってようやく、昨日までなかなか出来なかった、皆との朝のご挨拶や手遊びもがんばってやることが出来、園児たちの中へも少しずつ入っていけるようになりました。

最終日になってやっとエンジンが掛かってきたようです。 園児たちとのお別れ前にすることになっていた宿題の紙芝居も、精一杯大きな声で読んでくれました。終わるなり、真剣に聞いていた子どもたちからの盛んな拍手を浴びて、M君も、ようやく軌道に乗り始めたチャレンジ体験の終了が、とても残念でならないようでした。

どのクラスも「もう明日からお兄さん、お姉さんは来やはらへんのよ」と聞かされた子どもたち、とても残念がって「もっといっしょに遊びたい」「また来てや」と名残を惜しみ、中には涙ぐんでいる女の子もいたそうです。先生方も、園児たちと触れ合っている生徒さんたちの、いかにも中学生らしい斬新な発想に喜ぶ園児たちの姿を見て、フレッシュな刺激を与えられたとの感想を洩らしていました。

3日間の体験学習が終わって数日たった日の夕暮れ、といっても晩秋のこと日はとっぷりと暮れておりました。職員室の戸をたたく音がして先生が出て見ますと、そこに3人の見覚えのある中学生が立っています。「この間はお世話になりました。これ、園児の皆さんに上げて下さい」見ると、子どもたちひとりひとりへのお手製のプレゼントです。暗い山道をわざわざ届けにきてくれたのです。

翌日プレゼントをもらって大喜びの子どもたちは、お礼に、みんなでお返しをしよう、ということになり、ひとりひとりが画いた自画像を1枚の画用紙にまとめた、みんなの似顔絵アルバムをお兄さん、お姉さんに後日手紙を添えて贈ったのでした。

こうして、チャレンジ体験も無事、有意義に終わったのですが、実を申しますと、今回体験学習に来た6人の生徒さんの内5人までは、北白川幼稚園の卒業園児だったのです。「今どきの中学生は!」との一般世間の認識を払拭してくれるような、礼儀正しく真摯な学習振りだったのも、その源流をたどれば、かつての幼児教育が良かったのかも!( ちょっと手前味噌?)

山下一郎「遺稿集」より

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