『将棋教室』クラス便り(2018年2月)

「山びこ通信」2017年度冬学期号より下記の記事を転載致します。

『将棋教室』

担当 中谷 勇哉

 12月に久々の「将棋オープン戦(トーナメント)」を行いました。以前までと違い、その日に終わらなければ次回に持ち越し、というわけにもいかず心配していたのですが、なんとか時間内に表彰まで行うことができました。結果は、優勝こそ以前通ってくれていたNさんでしたが、二位三位は現役生のKくんとNくんで、見事に教室の面目を保ってくれました。

毎回の教室でももちろん真剣勝負をしているのですが、トーナメントとなると皆気合が入るようで、10人以上の子どもがいるにも関わらず、静寂の中で駒音だけが響くという空間が生まれました。将棋は礼節と論理のゲームです。集中して考え、自分なりの答えを出すということは、きっと今後の糧になるはずです。

さて、教室では、終局時間のズレからくる空き時間を活用するため、毎回事前に詰将棋を配っておくという試みを始めました。詰将棋は、クイズやパズル的な楽しさがあり、集中力を維持させるという効果があるだけではなく、次の対局への準備運動にもなります。実際、羽生善治二冠や藤井聡太五段など、多くの棋士が対局前に軽い詰将棋を解いていると述べています。

三手や五手の短い詰将棋は、何題も解くことで、詰みの形を知り、感覚を養うことにつながります。慣れていけば、対局中に完璧に読まなくても、ある程度直感的に詰むかどうか判断することができるようになります。テレビ対局をご覧になる方はお分かりになると思いますが、プロ棋士が解説の中で「おそらく詰み」「だいたい詰み」とよく言うのですが(実際それは当たっています)、これはその感覚が養われているからできることなのです。

感覚(直感)を鍛えることは、先に述べた集中して深く読むことと一見矛盾することのように思えます。しかし、両者は密接にリンクするものです。感覚があっても集中できなければ実際に詰ますことはできませんし、集中力だけあっても、毎度毎度詰みがあるかどうか深く考えることは現実的ではありません。感覚的に「おそらく詰む」と思ったときに、そこで「深く読む」フェーズに切り替えることによって、実戦で初めて詰ます(正解にたどり着く)ことができるのです。

教室では、詰将棋と実践を通して、それら感覚と集中力の両方を向上できたらと思います。