西洋の児童文学を読む(2017/6/22)

福西です。先週に引き続き、Aさんが当番です。

今回は17ページと長く、作者の情感がこもっているシーンが続きます。「暗闇・空腹・敵の存在」の次に、「昼・食料・いい人」という出来事の起伏が見られます。

第2章2 森の小屋のマヌケ

(Aさん)

要約

ティウリは目を覚ました。ティウリはおびえていた。小さな星が希望の光を放っていた。次の日、ティウリは朝食を食べ、出発した。明るい気分になった。しかし、それも長くは続かなかった。赤い騎兵が街道を通って行った。ティウリはもっと森の中へ入った。とつぜん後ろから声がした。おどろいてふりむくと、子どものような男が立っていた。男は自分をマヌケと名乗った。マヌケはティウリとしゃべりたいようだったが、ティウリは帰ってきたら、と約束をした。マヌケは食べ物をくれた。そして、自然にもある食べれるものを教えてくれた。ティウリは浅い穴にかくれて夜を明かした。

共感したところ

いい人だ。ティウリは思った。他の人とはちがっているけど、そんなまぬけだとは思わない。はげまされ、元気になったような気がした。

気が付いたこと

「太陽を追っかけて。」と何度もくり返し言っている。

E君とK君もそれぞれの要約と共感したところを発表し、コメントしてくれました。

講師からは次のことを指摘しました。

ティウリは目を閉じた。そして、すぐにふたたび、目を開けた。開けても閉じても、それほど変わらなかったけれど。(p84)

星が目に入った。小さな星が一つだけ。けれども、星は、光を放っている……希望の光を……。それは、ティウリの不安をぬぐいさりはしなかったが、勇気を取りもどさせてくれた。(p84)

この二つに同じ構造が見られる。ティウリが虚しさから懸命に自己を奮い立たせている様子が伺える。

ティウリは寝覚めの悪い夢から覚め、くじけそうになる心を何とか奮い立たせます。街道で赤い騎兵を見かけてやりすごし、街道を外れた森の中を進みます。そこで「ふしぎな人だった」(p88)とある、マヌケことマリウスに出会います。

ティウリは道を急いでいます。そして任務のために考え、以前よりも疑い深くなっています。一方マヌケは事情があって小屋を離れることができません。そして考えず、心のまま歌うように話しかけてきます。そして遠くへ行くティウリのことを「太陽を追っかけていく旅人さん」と呼び、西に何があるのかをおしゃべりしてほしいとせがみます。

人はマヌケのことを賢くないと思っていて、マヌケの周囲には彼に質問したり、話し相手になる者がいないことが行間から読み取れました。けれどもマヌケは独自の視点で物事を観察していて、有益な森の秘密を知っています。ティウリは偶然質問することで、その知恵を引き出します。また食料も提供されます。

ティウリは西へ(太陽を追いかけて)行くことを、マヌケは食料を母親に黙って提供したことを、互いの「秘密」として共有します。そのことでマヌケは得意になります。

最初は彼との出会いにいらいらしていたティウリも、別れ際には握手をして、二度振り返り、「かえすがえすも、ありがとう!」と言うようになります。

そして「帰ってきたら、おしゃべりして、ぜーんぶ話してあげよう」(p91)と約束します。この約束は、下巻のp339で果たされます。(K君が調べてくれました)

「木だって、大きくなるとき、急がない」(p90)というマヌケの台詞は、ティウリの大成を知る作者がマヌケを通して語らせているかのように感じました。