May 12, 2005

アエネイス読書会8.608-625

現在が第何回目かも、思い出さないといけませんね。(6巻末で第171回という記録が残っていたので、今は第240回ぐらいでしょうか?)

アエネイス8.608-625

At Venus aetherios inter dea candida nimbos
dona ferens aderat; natumque in ualle reducta
ut procul egelido secretum flumine uidit, 610
talibus adfata est dictis seque obtulit ultro:
'en perfecta mei promissa coniugis arte
munera. ne mox aut Laurentis, nate, superbos
aut acrem dubites in proelia poscere Turnum.'
dixit, et amplexus nati Cytherea petiuit, 615
arma sub aduersa posuit radiantia quercu.
ille deae donis et tanto laetus honore
expleri nequit atque oculos per singula uoluit,
miraturque interque manus et bracchia uersat
terribilem cristis galeam flammasque uomentem, 620
fatiferumque ensem, loricam ex aere rigentem,
sanguineam, ingentem, qualis cum caerula nubes
solis inardescit radiis longeque refulget;
tum leuis ocreas electro auroque recocto,
hastamque et clipei non enarrabile textum. 625

いよいよお待ちかね、ウルカヌスの盾の登場ですね。

福西

608-10
At Venus aetherios inter dea candida nimbos
dona ferens aderat; natumque in ualle reducta
ut procul egelido secretum flumine uidit,
さて、輝く女神ウェヌスが天の雲の間から、
贈り物を運びながら現れる。奥まった谷にいる息子を、
涼しい川から遠くに、彼が一人でいるところを彼女は見る。

ut:secretumな状態でいるところを
secretum < secerno離す(secretusでaloneの意味もある)

611
talibus adfata est dictis seque obtulit ultro:
姿(自ら)を突然現すなり、次のような言葉で彼女は語った。

612-4
'en perfecta mei promissa coniugis arte
munera. ne mox aut Laurentis, nate, superbos
aut acrem dubites in proelia poscere Turnum.'
「見よ、我が夫の技術によって、完成されたる、約束の贈り物を。
すぐにでも、息子よ、驕れるラウレンテース人でも、
精悍なトゥルヌスでも、戦場へ呼ぶことを、お前はためらわないがよい」

percecta=promissa=munera
ne:dubitesを否定
dubito(1)ためらうsub.pr.2sg.勧誘?

 *このウルカヌスの「技術」は、作者の技術とも重なりますね。

615
dixit, et amplexus nati Cytherea petiuit,
彼女は言った。そして息子の抱擁をキュテラの女神は求めた。

616
arma sub aduersa posuit radiantia quercu.
輝く武具を正面のカシの下に置いた。

 このarmaは武具一式ですね。(盾単品ではなく)

617-8
ille deae donis et tanto laetus honore
expleri nequit atque oculos per singula uoluit,
彼(アエネアス)は、女神の贈り物とこれほどの名誉に嬉々とし、
満たされることなく(飽きずに)、そして目を一つ一つに移した。

expleri:inf.pass.満たされること
nequit:~ができない

619-20
miraturque interque manus et bracchia uersat
terribilem cristis galeam flammasque uomentem,
彼は驚いた。手と腕を回す間に、
羽飾りで恐ろしい──炎を吐いている兜に対して(驚いた)


621-3
fatiferumque ensem, loricam ex aere rigentem,
sanguineam, ingentem, qualis cum caerula nubes
solis inardescit radiis longeque refulget;
また必殺の剣に対して、青銅製のかたい──
血色の、大きな胸当てに対して。さながら、ねずみ色の雲が
日光で火がつき、長く反射する時のよう(な色であった)。

qualis cum:さながら~の時のよう
solis radiis:太陽の放射(日光)で

624-5
tum leuis ocreas electro auroque recocto,
hastamque et clipei non enarrabile textum.
合金と鋳直された金で滑らかなすね当てに対して、
槍と、物語ることのできない盾の模様に対して(驚いた)。

non enarrabile:物語ることができない
 *そのように前置きしておいて、作者は文字で絵画的な表現に腕を振うわけですね。

624の韻律:tum levis ocreas electro auroque recocto
トゥムレー|ウィーソクレ|アーセー|レクトラウ|ロークェレ|コクトー|

従ってlevisは、レウィス(軽い)ではなく、レーウィース(滑らかな)の方。

Posted by at May 12, 2005 01:22 AM | TrackBack
Comments

>608-10
>At Venus aetherios inter dea candida nimbos
>dona ferens aderat; natumque in ualle reducta
>ut procul egelido secretum flumine uidit,
>さて、輝く女神ウェヌスが天の雲の間から、
>贈り物を運びながら現れる。奥まった谷にいる息子を、
>涼しい川から遠くに、彼が一人でいるところを彼女は見る。
>
>ut:secretumな状態でいるところを
>secretum 611
>talibus adfata est dictis seque obtulit ultro:
>姿(自ら)を突然現すなり、次のような言葉で彼女は語った。

ラテン語の語順は時間的に逆になっていますが、わざとそのような表現
にする場合があります。

>612-4
>'en perfecta mei promissa coniugis arte
>munera. ne mox aut Laurentis, nate, superbos
>aut acrem dubites in proelia poscere Turnum.'
>「見よ、我が夫の技術によって、完成されたる、約束の贈り物を。
>すぐにでも、息子よ、驕れるラウレンテース人でも、
>精悍なトゥルヌスでも、戦場へ呼ぶことを、お前はためらわないがよい」
>
>percecta=promissa=munera
>ne:dubitesを否定
>dubito(1)ためらうsub.pr.2sg.勧誘?

ne と接続法で禁止の命令になります。

> *このウルカヌスの「技術」は、作者の技術とも重なりますね。

なるほど。あと、「約束」ですが、ウルカヌスのウェヌスへの約束は、
401以下、ウェヌスのアエネアスへの約束は、
531 agnouit sonitum et diuae promissa parentis. 参照。

>615
>dixit, et amplexus nati Cytherea petiuit,
>彼女は言った。そして息子の抱擁をキュテラの女神は求めた。

訳されたとおりです。

>616
>arma sub aduersa posuit radiantia quercu.
>輝く武具を正面のカシの下に置いた。
>
> このarmaは武具一式ですね。(盾単品ではなく)

盾、兜、鎧を意味します。私のもっている注釈書
の表紙にこの場面の挿し絵(ドライデンの「アエネイス」に添えられた
P.Fourdrinier の作:the shield of Aeneas)があるんですが、
盾だけでなく甲や鎧も天使が運んできています。

>617-8
>ille deae donis et tanto laetus honore
>expleri nequit atque oculos per singula uoluit,
>彼(アエネアス)は、女神の贈り物とこれほどの名誉に嬉々とし、
>満たされることなく(飽きずに)、そして目を一つ一つに移した。
>
>expleri:inf.pass.満たされること
>nequit:~ができない

honor は gift を含意します。

亮馬先生は何度も聞かされたと思いますが、
この表現は、この詩の解釈をする上で極めて重要です。
たとえば、第一巻の「ユーノーの神殿の絵」をアエネアスが
見る際にも、同様の表現があります。

>619-20
>miraturque interque manus et bracchia uersat
>terribilem cristis galeam flammasque uomentem,
>彼は驚いた。手と腕を回す間に、
>羽飾りで恐ろしい──炎を吐いている兜に対して(驚いた)

inter は対格を支配する前置詞なので、> でひとくくりです。この副詞句は uersat にかか
っています。何を回す(uersat)かといえば、
620 の対格です。「彼は驚き、手と腕での間で・・・を
回した」ということでしょう。大きな丸い盾を
両手で回すと、上のような表現がイメージできると思います。

ただ、miratur がありますので、620 以下がその目的語として
機能しているとみなせます。日本語に直しにくいです。
手にとって武具の感触を確かめるように動かし、かつこの
武具そのものに驚嘆した(手にすることの不思議さ?造形の美に?)
ということでしょうか。

>621-3
>fatiferumque ensem, loricam ex aere rigentem,
>sanguineam, ingentem, qualis cum caerula nubes
>solis inardescit radiis longeque refulget;
>また必殺の剣に対して、青銅製のかたい──
>血色の、大きな胸当てに対して。さながら、ねずみ色の雲が
>日光で火がつき、長く反射する時のよう(な色であった)。
>
>qualis cum:さながら~の時のよう
>solis radiis:太陽の放射(日光)で

訳されたとおりです。

>624-5
>tum leuis ocreas electro auroque recocto,
>hastamque et clipei non enarrabile textum.
>合金と鋳直された金で滑らかなすね当てに対して、
>槍と、物語ることのできない盾の模様に対して(驚いた)。
>
>non enarrabile:物語ることができない
> *そのように前置きしておいて、作者は文字で絵画的な表現に腕を振うわけですね。

そのとおりです。このフレーズは見落としていました。前回の論文で、
textum が鍵になっていましたが、この箇所にも留意すればよかったですね。

>624の韻律:tum levis ocreas electro auroque recocto
>トゥムレー|ウィーソクレ|アーセー|レクトラウ|ロークェレ|コクトー|
>
>従ってlevisは、レウィス(軽い)ではなく、レーウィース(滑らかな)の方。

解説してくださった通りです。

Posted by: 山下太郎 at May 15, 2005 10:28 AM


>そのとおりです。このフレーズは見落としていました。前回の論文で、textum が鍵になっていましたが、この箇所にも留意すればよかったですね。

第五花の
589 parietibus textum caecis iter
(見えない壁で織られた道を)
の箇所ですね。

その後にも、
593 texuntque fugas et proelia
「逃亡と戦闘を織る」という表現があったのを憶えています。

偶然気になったのですが、今回出てきたtextumと同じ行にある、enarrabile(物語ることができない)に似た単語として、他に、複雑に織り込まれた迷宮ラビリントゥスの描写にも

トロイア競技祭 5.591 inremeabilis
ダエダルスの扉絵 6.27 inextricabilis

「~できない」、という形容詞は、これから始まる絵画的表現の複雑さを示す、作者の癖かもしれないという気がします。(あくまで気がするだけですが)

ようは、絵画的表現には、その「絵」の複雑さが、まずひと目見た者を圧倒し、それを(作者が)順番に(ordine)、一つずつ (singula)見ていくことで、(読者にとって)驚きが喜びに変わるという効果がありますね。

またその絵画的表現が途中で中断されることでも効果があることは、ダエダルスの扉絵にうかがわれますね。

Posted by: Ryoma Fukunishi at May 17, 2005 07:38 AM

福西です。

>ようは、絵画的表現には、その「絵」の複雑さが、まずひと目見た者を圧倒し、それを(作者が)順番に(ordine)、一つずつ (singula)見ていくことで、(読者にとって)驚きが喜びに変わるという効果がありますね。

絵に刻まれた出来事(主に過去の体験)を順番に紐解くことで、過去から現在、現在から未来へ、という時間的な効果(未来に希望を持つこと)も挙げられますね。

Posted by: Ryoma Fukunishi at May 17, 2005 07:45 AM

>トロイア競技祭 5.591 inremeabilis
>ダエダルスの扉絵 6.27 inextricabilis

これは気づきませんでした。うまく対応
していますね。こういうのは、論文で
発表すると、too goo to be true という
わけで、ほんまやろか?とうさんくさく
思われるかもしれません。が、ウェルギリウス
はこういう言葉の遊び心のあった人で、
農耕詩でも言葉の対応関係からいろいろ
な議論が行われてきた人です。

Posted by: 山下太郎 at May 17, 2005 02:47 PM
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