『かずの一年』(作文)
福西亮馬
「たしざんとひきざん。
かけざんとわりざん。どれがすき?」
「うんと…わりざん」
「あ、あたしも。一ばんすき」
「ぼくも! わりざんが一ばんやんな!」
これは一年生の終わりごろ、夕まぐれの
会話だったことを覚えています。
わり算の「何が好き?」だったかと言うと、
わり切れたときの、鋭い喜びと、ついでそ
の後で知った、好きな女の子も好きだっ
たことです。
私もまた、「数学は情緒」(岡潔)だと感じます。
つまらない計算も、味わえば楽しいのです。た
とえばガウス(1777-1855)というすごい人が
いて、次のような計算をしています。
1/71=0.01408450704225352112676056338028169014…
一体いつまで続くのか、と思えるような数でも、
ガウスは飽かず眺めて、ここで手を止めてしまう
のが名残り惜しかったろうと思われます。
というのは、
1/71=0. 01408450704225352112676056338028169 014…
となっているからです。上をじっくり見てください。
「繰り返し」を起こしていることに気付くでしょう。
(これはわり切れないわり算ですが、わり切れない
ときも、このような独特の楽しみ方があるのです)
「無限軌道の上を走るようなものだから、面白くて
循環節が終っても残り惜しいほどに少年ガウスは
感じたのではなかろうか」
と、数学者の高木貞二は『近世数学史談』でこの
エピソードを紹介しています。これはガウスの、
少年時代の思い出なのです。
さて私の思い出に戻りますが、あの会話から何が
うかがえるかというと、わり算をすでに一年生で習っ
ていたことです。
今は二年生で習います。九九が二年生から始まる
からです。私は数学の色々な面白い話をするときに、
このかけ算(九九)を知らなければできないと感じる
ようになりました。
「かけると、意味が作れ、意味があると、話ができる」
からです。
たて×よこ=面積 (xy=F)
たて×よこ×たかさ=体積 (xyz=V)
たて×よこ×たかさ×じかん=(四次元)空間 (xyzt=S)
質量×加速度=力 (ma=f)
速さ×時間=距離 (vt=s)
力×距離=仕事 (fs=w)
などなど。話はかけてかけて組み合わせていくと、
どんどん膨らんでいきます。
福西亮馬