Archive for the ‘第一変化名詞’ tag
Aquila non captat muscam.
「アクゥィラ・ノーン・カプタト・ムスカム」と読みます。
aquila は「鷲」を、musca は「ハエ」を意味するそれぞれ第一変化名詞です。muscam は単数・対格の形です。
captat は「つかまえる」を意味する第一変化動詞 capto の現在、単数・三人称です。
「鷲はハエをつかまえない。」という意味になります。
エラスムスの言葉です。鷲は戯れにも蝿を捕まえることをしない、大物は小物を相手にしない、の意味でしょう。
Fortes fortuna adjuvat.
「フォルテース・フォルトゥーナ・アドユウァト」と読みます。
fortesは「強い」を意味する第3変化形容詞、fortisの複数対格です。fortuna は「運命」を意味する第1変化名詞・単数・主格で、adjuvat は「助ける」を意味する第1変化動詞 adjuvo の単数3人称・現在の形です。
「運命は、強い者を助ける。」の意で、英語のことわざ”Heaven helps those who help themselves.”を思い出します。
テレンティウスの作品に見られる言葉です(『ポルミオ』)。
「運命は臆病者の味方をしない」(ソポクレス断片927)という言葉もあります。
類似表現に、Audentes fortuna juvat.(大胆な者たちを運命は助ける)もあります。
<補足>ラテン語の Fortuna は女性名詞です。-a で終わる単語(第一変化名詞)は基本的に女性名詞です。Fortuna が「運命の女神」と訳され得るのは、この単語が女性名詞であることに基づきます。
Victoria (勝利、勝利の女神)も同じです。これらの単語は、英語の victory, fortune の語源です。このように、古典の時代では、抽象名詞が神格化されて用いられることがよくあります。
あと、「正義の女神」という表現もラテン語ではJustitia といいます。綴りを見れば、これも女性名詞とわかります。だてに「・・・の女神」とは呼ばないわけです。そう呼ぶ理由はラテン語名を思い浮かべることで理解できます。
関連図書:
ローマ喜劇集〈5〉 (西洋古典叢書)
テレンティウス 木村 健治 
Gloria in excelsis deo et in terra pax hominibus bonae voluntatis.
「グローリア・イン・エクスケルシース・デオー・エト・イン・テッラー・パークス・ホミニブス・ボナエ・ウォルンターティス」と読みます。
gloria は「栄光」を意味する第一変化名詞、単数主格です。
excelsis は「高い」を意味する第一・第二変化形容詞 excelsus, -a, -um の中性・複数・奪格です。名詞的に用いられ、in とともに「高いところに」と訳せます。
deo は「神」を意味する第二変化男性名詞 deus の単数・与格です。「神に」となります。
terra は「大地」を意味する第一変化女性名詞、単数・奪格です。
pax は「平和」を意味する第三変化女性名詞、単数主格です。
hominibus は「人間」を意味する第三変化名詞、複数与格です。
bonae は「よい」を意味する第一・第二変化形容詞 bonus, -a, -um の女性・単数・属格です。
voluntatis は「気持ち、心情」を意味する第三変化女性名詞、単数・属格です。
全体の構文は、二つの名詞の主格(gloria, pax)が「与格」に「ありますように(sit)」となります。なお、sum の接続法・能動相・現在、三人称単数の sit は省略されています。
「高いところでは、神に栄光がありますように。そして、地上では、よい心をもつ人々に平和がありますように」と訳せます。
新約聖書の「ルカ伝」第2章14節に見られる言葉です。
ミサ曲の一節として有名です。
Ibi semper est victoria, ubi concordia est.
「イビ・センペル・エスト・ウィクトーリア・ウビ・コンコルディア・エスト」と読みます。
ibi は「そこに」を意味する副詞です。
semper は「いつも」を意味する副詞です。
victoria は「勝利」を意味する第一変化名詞、単数主格です。
ubi は「・・・するところに」を意味する関係副詞です。
concordia は「調和」を意味する第一変化名詞、単数主格です。
est は「ある」を意味する不規則動詞 sum の直説法・能動相・現在、三人称単数です。
「調和のあるところ、そこにはいつも勝利がある」と訳せます。
プブリリウス・シュルス、『金言集』の言葉です。
Industriae nil impossibile.
「インドゥストリアエ・ニール・インポッシビレ」と読みます。
industriae は「勤勉」を意味する第一変化名詞 industria の単数与格です。
nil は英語の nothing に相当する nihil の別形で、「無」を意味します。中性・単数・主格です。
impossibile は「不可能な」を意味する第三変化形容詞、中性・単数・主格です。
動詞の est が省略されています。
「勤勉にとっては何事も不可能ではない」という意味です。
Nec mora, nec requies.
「ネク・モラ・ネク・レクィエース」と読みます。
nec A nec B で、A,Bともに否定します。
mora は「遅延、休止」を意味する第一変化名詞、単数主格です。
requies は「休息」を意味する第一変化名詞、単数主格です。
動詞としては、est を補うことができますが、実際には省略されています。
「休止も休息もない」と訳せます。
ウェルギリウスの『農耕詩』に見られる表現です(3.110)。
Ridetur, chorda qui semper oberrat eadem.
「リーデートゥル・コルダー・クィー・センペル・オベッラト・エアーデム」と読みます。
ridetur は「笑う」を意味する第二変化動詞 rideo の直説法・受動相・現在、三人称単数です。
chorda は「弦」を意味する第一変化名詞、単数奪格です。
qui は「・・・するところの」を意味する関係代名詞、男性・単数・主格です。先行詞は省略されています。「・・・する人」と訳せます。
semper は「いつも」を意味する副詞です。
oberrat は「間違う」を意味する第一変化動詞 oberro の直説法・能動相・現在、三人称単数です。
eadem は「同じ」を意味する指示代名詞 idem の女性・単数・奪格で、chorda にかかります。eadem は形容詞として使われています。
前置詞 in はありませんが、奪格の chorda…eadem だけで、「同じ弦で」と訳せます。
「いつも同じ弦で弾き間違える者(琴弾き)は嘲笑される」と訳せます。
ホラーティウス、『詩論』(356)に見られる表現です。
詩学 (岩波文庫)
アリストテレース ホラーティウス 松本 仁助 