悲しんでくれ、おお愛と欲望の神々たちよ、人間の喜びに関わる 限りの神よ。私の恋人の雀が死んだ。彼女が目に入れても痛くない くらいに可愛がっていた一羽の雀が死んだ。
蜜のように愛らしく、少女が母親に甘えるように、私の恋人になつ いていた。彼女の膝の上から離れようとせず、あちこち向きを変え ては飛び跳ねる。ちゅんちゅんなくのは、彼女に対してだけだっ た。
それが今や漆黒の道を通り、誰も引き返すことのできない場所に向 かって進んでいる。オルクス(冥界)のいまわしい暗闇よ、くたば るがいい。美しい命をみんな飲み込んでしまう暗闇よ。
ああ、何という残酷な出来事だろう。ああ、可哀想な雀の命よ。 今、おまえを悲しむあまり、私の恋人は泣きはらし、はれた目が 真っ赤になっている。
カトゥッルスがここで描く世界は、当時のローマではたいへん奇異に映った可能性があります。 現実のローマの政治や戦争をテーマとした詩(叙事詩が扱う)を大きい詩とみなしますと、カトゥッルスの得意とする形式は「小さい詩」に他なりません。
この大小のジャンルの違いについて、カトゥッルス自身強く意識していました。 手本として、ギリシアのカッリマコス(前3世紀にアレクサンドリアで活躍)を念頭に置いていたとされます。
カッリマコスは、ホメロスに代表される叙事詩を最高の文学形式とみなす伝統に反旗を翻し、もてる学識をふんだんに盛り込んだ「小さい」けれども彫琢を加えた詩の価値を主張しました。