ラテン語名詞の活用

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ラテン語の名詞

基本的な特徴を説明します。説明は飛ばし、暗記すべきものだけを把握したい方はこちらをどうぞ>>名詞の活用一覧表

全部で5種類あります。「5種類しかない」と前向きにとらえましょう。 そのうちよく出てくるのが第3変化名詞までです。 第1、第2変化名詞は機械的に覚えられます。暗記を要するのが第3変化名詞です。

名詞の分類と格変化

名詞の分類

ラテン語の名詞は、男性女性中性の3つに分類されます。

名詞の格変化

格変化には、基本的に、主格(nom.)、呼格(こかく)(voc.)、属格(ぞっかく)(gen.)、与格(よかく)(dat.)、対格(acc.)、奪格(だっかく)(abl.)の6つがあります。

これら以外の特殊な格として地格(ちかく)(loc) があります。これは「どこに?」の答えを前置詞を用いずに示す格です。固有名詞の場合、第一、第二変化の単数名詞であれば、地格は属格と同じです。

地格の例

Roma ローマ 第一変化名詞の単数・主格 → Romae ローマエ 地格 (ローマで)

Athenae アテーナエ 第一変化名詞の複数・主格 → Athenis アテーニース 地格(アテーナエで)

斜格

主格、呼格以外を総称して、斜格(oblique case)と呼びます。

格の概念と用法

主格(しゅかく)

次の例文をご覧ください(リンク先に各文の詳しい解説があります)。 太字の部分が名詞の主格です。主格(しゅかく)は主語を示します。 文の補語にもなります (3番のCultura または philosophia、4番の Homo)。 ラテン語は語順が自由なので、3番の例文のように、A=Bの構文において、 Aが主語なのか、Bが主語なのか、すぐに決められない場合があります。 3番でしたら、「魂の陶冶が哲学である」と訳すことも可能です(Cultura を主語とみなします)。4番の例文では、sum から主語が「私は」であることが割り出せます。よって、Homo は主語ではなく補語であると判断します。

  1. Fama volat. 噂は飛ぶ。
  2. Hora fugit. 時間は逃げる。
  3. Cultura animi philosophia est.  心を耕すことが哲学である。
  4. Homo sum. 私は人間である。
呼格(こかく)

呼格は相手に対する呼びかけを示します。「〜よ」と訳せます。 1番のように間投詞 o (おお)とともに用いられることもよくあります。 3番のラテン語は日本語訳も有名ですね。

  1. Abi ad formicam, o piger.アリのところに行け、おお怠惰な者よ。
  2. Medice, cura te ipsum. 医者よ、汝自らを治せ。
  3. Et tu, Brute? ブルートゥスよ、おまえもか。
属格(ぞっかく)

属格(ぞっかく)は、原則として所有や帰属の概念を示します(例の1番)。 「・・・の」と訳せば問題ありません。 慣れてきたら、その他の用例にも注意します。 たとえば、上の「主格」の例文3にあげた animi (属格)の用法はどうでしょう? このanimi は「魂が何かを所有している」とはみなせない気がします。 Cultura animiの直訳は「魂の陶冶」ですが、その意味は「魂耕すこと」と 解釈できることから、この animi のように意味上目的語に当たる属格のことを「目的の属格」と呼びます。 2番の litterarum も同様です。「文学に対し情熱を注ぐこと」と解釈できます。

  1. rosa puellae少女のバラ
  2. studium litterarum文学への熱意
  3. Animi bonum animus inveniat.魂の善良さは魂が見出すのがよい。
  4. Justitia saepe causa gloriae est. 正義はしばしば栄光の原因である。
与格(よかく)

基本的に間接目的を示します。日本語では「・・・に」と訳せます。英語の I give you a present. の例のうち、you は間接目的語とみなせますが、 この you (あなたに)に相当する意味(・・・に)をラテン語の与格は示します。与格にはそのほかにも様々な用例がありますが(3番の例のように)、 まずはこの基本例をしっかりと押さえることが大切です。

  1. Date et dabitur vobis. 与えよ、そうすればあなた方に与えられるだろう。
  2. Dona nobis pacem. われわれに平和を与えよ。
  3. Homo homini lupus. 人間は人間にとって狼である。(判断者を表す与格)
対格(たいかく)

対格(たいかく)は直接目的を示します。英語の I love you. の you (直接目的語)に相当する格です。 そう考えれば、たいていの場合「・・・を」と訳せば事足りることがわかります。5番目の例文は、いわゆる「対格不定法」と呼ばれる用法です(不定法の意味上の主語を対格で表現する用法)。

  1. Aquila non captat muscam 鷲(わし)はハエを捕まえない。
  2. Barba non facit philosophum. 髭(ひげ)は哲学者を作らない。
  3. Boni amant bonum. 善人は善を愛す。
  4. Carpe diem. 「カルペ・ディエム」(この日を摘め)。
  5. Imperatorem stantem mori oportet. 最高司令官は立ったまま死なねばならない。
奪格(だっかく)

奪格(だっかく)は一筋縄で理解しがたい格です。単独で「・・・において」(場所)、「・・・によって」(手段)、「・・・から」(分離)といった 場所、手段、由来などを表します。例の1番の rosis は rosa (バラ)の複数・奪格ですが、この奪格は「バラによって」と訳せます。これを「手段の奪格」と呼びます。一方で前置詞とともに用いられる例も数多く見られます(前置詞は対格か奪格とともに用いられます)。 例の2番、3番は前置詞 in とともに用いられる例です。「in + 場所(←この場所を示す名詞がラテン語では奪格になる)」 で副詞句をつくる点は、英語その他の言語でもおなじみですね。

  1. Mensam rosis orno.わたしは机をバラで飾る。
  2. Asinus in tegulis. 屋根の上のロバ。
  3. Lupus in fabula. 話の中のオオカミ。
  4. Ab ovo usque ad mala. 卵からリンゴまで。

格変化の注意事項

名詞は5種類ありますが、単数属格の形によってこの5種類の識別が可能です。 次に第一変化名詞から第五変化名詞まで順に「辞書の見出し」の形を示します。

  1. stella, -ae ステッラ 星
  2. amicus, -i アミークス 友、verbum, -i ウェルブム 言葉
  3. homo, -minis ホモー 人
  4. fructus, -us フルークトゥス 果実
  5. dies, -ei ディエース 日

辞書を使ってラテン語の名詞を引くコツは、 見出しから2番目にあげられた単数属格の形に注意することです。 上の1番から5番の見出しの形に注意しますと、stella, amicus,...dies といった 単数・主格の形の右隣に - (ハイフン)で始まる文字が添えられていることに気づきます。 -ae とは stellae のことです。-i とはamici のことです。 つまり、-ae, -i,...-ei は単数・属格の省略形です。省略せずにちゃんとした形で 載せてくれたらいいのに、と誰しも思いますが、このように省略するのが一般です。  この形に注意し、それぞれの名詞がどの活用パターンに属すかを判断することで、  あふれるほどたくさん存在するラテン語名詞をたった5つに分類し把握できます  (厳密には不規則変化名詞というのが若干存在しますが、本当にごくわずかしか  ありません)。

冠詞について

古典ギリシア語には冠詞があるのですが、ラテン語にはありません。 冠詞がないメリットは文章がコンパクトになるという点があげられます。 しかし、ラテン語の場合、冠詞がないことと、語順が自由であるため、英語における A is B のパターンの文章でも、AはBである、と決めてかかれません。BはAである、と訳せる場合も多くありますので。

ギリシア語ですと語順はラテン語同様に自由ですが、名詞に冠詞をつけます(すべてではありません)ので、それが語順を決定する鍵になります。 主語にあたる名詞に冠詞をつける(補語の名詞にはつけない)というルールがあるためです。 たとえば、有名な Deus erat verbum(言葉は神であった)という表現について、deus (神)が verbum (言葉)なのか、verbum が deus なのか、ラテン語で判然としませんが、元のギリシア語で verbum にあたる単語に冠詞がついているため、「言葉は神であった」と訳せます。

第1変化名詞

どの教科書でも一般に第一変化名詞から学びます(「楽しく学ぶラテン語」は第二変化の次に第一変化を学びます)。しっかり暗記してください。

第一変化名詞の活用例として、stella「星」(ステッラ)の変化を見てみましょう。

  単数 複数
主・呼格 stella stellae
属格 stellae stellarum
与格 stellae stellis
対格 stellam stellas
奪格 stella stellis

単数から順に読むと、「スッラ・スッラエ、スッラエ、スッラム、スッラー」、複数は「スッラエ・ステッラールム・スッリース・スッラース・スッリース」と読みます。 単数奪格で、語尾のaを長く読む点に注意してください。 単数主格 stellaは、「星は」と訳せます。 呼格 stellaは「星よ」です。 与格 stellaeは、「星に」とか「星にとって」という意味です。 対格 stellamは「星を」になります。 奪格(だっかく)は一言で説明できない格です。 「星から」や「星によって」と訳すことができます。inやexといった前置詞とセットで登場することが多いです。

第1変化名詞の大部分は女性名詞である点も覚えておきましょう。 ギリシア神話の「ケパロスとプロクリスのエピソード」では、 妻の誤解(夫に愛人がいるという勘違い)は、そよ風(aura)に語りかけた夫の言葉に原因がありました。「そよ風(=aura アウラ)よ」という言葉は、まるで女性に対する語り掛けであると錯覚されたからです。(つまり、aura は女性名詞)。

第1変化名詞は、辞書の見出しでは、-aで終わる名詞と覚えてください。 例えば、fama (ファーマ) うわさ、dea (デア)女神、gloria (グローリア)栄光、terra (テッラ)大地、via (ウィア)道、などは全部第1変化名詞です。 繰り返しになりますが、第一変化名詞の場合、辞書の見出しは、ふつう fama, ae, f. となっています。 単数・主格の次に、単数・属格の形 (-ae)をかくことにより、 この単語の変化形が第1変化名詞だとわかります(わかってください)。 ちなみに、最後のf. は女性名詞 (feminine)であることを示します。

第1変化名詞の例

第1変化の場合はその大半が女性名詞です。 dea デア 「女神」、 filia フィーリア 「娘」、puella プエッラ 「少女」、 regina レーギーナ 「女王」など。

第1変化名詞で男性のものは、agricola アグリコラ 「農夫」、nauta ナウタ 「水夫」、poeta ポエータ 「詩人」、collega コッレーガ 「同僚」、scriba スクリーバ 「書記」などです。

第1変化名詞の用例

実際の文の中で名詞はどのように使われるのでしょうか。第1変化名詞を例にとって説明します。 なお、例文に使っている動詞の活用については、「動詞」を参照してください。 ちなみに例にとりあげた「輝く」を意味する mico(ミコー)は、 第1変化動詞、 「見る」という意味の video (ウィデオー)は第2変化動詞です。

Stella micat. 1つの星輝く。
Stellam video.  私は1つの星見る。
Stellae micant.  複数の星輝いている。
Stellas video. 私は(複数の)星見ている。

第1変化名詞の格言

リンク先に詳しい文法的説明があります。

Aquilanon captat muscam. 鷲(わし)は蠅をつかまえない。
Fama volat. 噂は飛ぶ。
Justitia saepe causa gloriae est. 正義はしばしば栄光の原因である。
Scientia est potentia. 知識は力である。
Vita brevis, ars longa. 人生は短く、技は長い。

第2変化名詞

次に第2変化名詞について説明します。-us で終わる男性名詞と -um で終わる中性名詞に大別できます。それぞれの活用を順に見ていきましょう。

(1)-us で終わる男性名詞

amicus「友」(アミークス)の変化を紹介します。

  単数 複数
主格 amicus amici
呼格 amice amici
属格 amici amicorum
与格 amico amicis
対格 amicum amicos
奪格 amico amicis

単数の発音は、 「アミークス・アミーケ・アミーキー・アミーコー・アミークム・アミーコー」となります。 複数は「アミーキー・アミーキー・アミーコールム・アミーキース・アミーコース・アミーキース」です。 何度もこの順で発音し、暗記してください。 そのさい、複数・属格のみ、アクセントの位置が変わっていますので気をつけます。

また、第二変化名詞の場合、呼格主格と異なります。 これは第2変化名詞の単数だけの特徴です。これも注意してください。 例:「主よ!」はdomine(ドミネ)、「ブルータスよ!」はBrute(ブルーテ)となります。有名な「ブルータスよ、おまえもか」のラテン文は、Et tu, Brute?(エト・トゥー・ブルーテ)です。

(2)-umで終わる中性名詞

verbum(ウェルブム)のように単語の語尾が -um で終わる名詞があります。 単数属格は上にあげた amicus (-us で終わる男性名詞)と同じく語尾は -i です。 この共通性が示す通り、どちらも第2変化名詞のグループに属します。

verbum「言葉」(中性名詞)の活用を紹介します。

  単数 複数
主・呼格 verbum verba
属格 verbi verborum
与格 verbo verbis
対格 verbum verba
奪格 verbo verbis

単数の発音は、「ウェルブム・ウェルビー・ウェルボー・ウェルブム・ウェルボー」です。 複数は「ウェルバ・ウェルボールム・ウェルビース・ウェルバ・ウェルビース」となります。

ここでまた大事なことをお話しします。 中性名詞は主格と対格が同じ形ということです。

第2変化名詞の例文

第2変化名詞を使ったラテン語の表現をいくつかご紹介します。

Et armaet verba vulnerant. 武器と言葉は傷つける。
Exempla docent, non jubent. 模範は教えるが、命令しない。
Verbavolant, scripta manent. 言葉は飛ぶが、文字は残る。
Verum cur non audimus? quia non dicimus. 我々は真実をなぜ聞かぬのか?我々が話さないからだ。

第3変化名詞

ラテン語の名詞に関して自由に辞書を引くためには、この第三変化名詞の習得が鍵を握ります。

第3変化名詞の活用

homo「人間」(ホモー)(男性名詞)の変化を見てみましょう。

  単数 複数
主・呼格 homo homines
属格 hominis hominum
与格 homini hominibus
対格 hominem homines
奪格 homine hominibus

単数の発音は、「モー・ミニス・ミニー・ミネム・ホミネ」となります。 複数は「ミネース・ミヌム・ミニブス・ミネース・ミニブス」です。

第3変化の特徴は、単数主格について、さまざまの語尾がみられることでしょう。 言い換えれば、この特徴が第三変化の学習を難しく見せています。ここで挫折する人が多いです。 第一、第二変化名詞は、単数・主格、すなわち、辞書の見出しの形が明確です。 第三変化の場合、よりによって、辞書の見出しの形(単数・主格)が一定の形ではありません。 たとえば、lex(f.レークス)「法」、genus(n.ゲヌス)「性」、ignis(m.イグニス)「火」はいずれも第3変化名詞ですが、 ごらんのように単数・主格の語尾はさまざまです。x で終わったり、us でおわったり・・・。

また、の点でも、第1変化女性第2変化男性(語尾が-us)か中性(語尾が-um)といった特色がありますが、 第3変化はすべての性がまんべんなく現れます。 ちなみに、第4変化は男性と中性、第5変化は女性です。 昔から言うように、「習うより慣れよ」の精神で乗り越えてください。

第3変化名詞の例文

実際の例文を見てみましょう。それぞれの例文に第3変化名詞が登場しています(太字の語彙)。

Homo homini lupus. 人間は人間にとってオオカミ。
Mors certa, hora incerta. 死は確実、その時は不確実。
Omnia vincit Amor. 愛はすべてに打ち勝つ。
Probitas laudatur et alget. 正直は賞賛され、凍える。
Varietas delectat. 多様性は喜ばせる。
Veritas liberabit vos. 真理は汝らを自由にするだろう。
Virtus laudata crescit. 徳は賞賛されて成長する。

第4変化名詞

第一変化名詞〜第三変化名詞に比べると、ややマイナーな印象のある第四変化名詞をご紹介します。 語彙数が限られているので、出現回数が少ないのです。初歩のうちは、第二変化名詞と混同したり、 いろいろつまづきやすい名詞です。

第4変化名詞の変化

fructus(m. 果実)(フルークトゥス)の変化は次のようになります。

  単数 複数
主格 fructus fructus
呼格 fructus fructus
属格 fructus fructuum
与格 fructui(-u) fructibus
対格 fructum fructus
奪格 fructu fructibus

母音の長短にも注意して発音をカタカナ表記します。 単数について主格から順に、「フルークトゥス・フルークトゥス・フルークトゥース・フルークトゥイー・フルークトゥム・フルークトゥー」となります。 単数与格は fructu (フルクトゥー)の形もあります。 複数は、順に「フルークトゥース・フルークトゥース・フルークトゥウム・フルークティブス・フルークトゥース・フルークティブス」となります。 例によって、繰り返し発音して暗記しましょう。何も見ずに紙に活用表を完成できたら合格です。

第4変化名詞の例文

第5変化名詞

最後になりましたが、第5変化名詞を紹介します。これも数に限りがあって、出現頻度は少ないです。しかし、重要な 単語が多いのも特徴です。

第5変化名詞の活用
  単数 複数
主格 dies dies
呼格 dies dies
属格 diei dierum
与格 diei diebus
対格 diem dies
奪格 die diebus

発音の仕方は、単数から順に、「ディエース・ディエース・ディエーイー・ディエーイー・ディエム・ディエー」です。 複数は「ディエース・ディエース・ディエールム・ディエーブス・ディエース・ディエーブス」となります。これが 最後だと思ってがんばって覚えましょう。これができたら、 ラテン語の名詞は制覇したことになります。

第5変化を用いた例文

いくつか例文を紹介します。

Carpe diem. その日を摘め。
De Rerum Natura. 事物の本性について。(ルクレーティウスの作品名)
Felix qui potuit rerum cognoscere causas. 事物の原因を認識することのできた者は幸いである。(ルクレーティウスの幸福観にウェルギリウスが言及した表現)
Fallaces sunt rerum species. 事物の外観は偽りに満ちている。

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