ラテン語格言集 (9)
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Medio tutissimus ibis.
「メディオー・トゥーティッシムス・イービス」と発音します。
動詞は ibis で、不規則変化動詞 eo (行く)の未来・二人称・単数です。
主語は示されていませんが、動詞の形から二人称・単数とわかります。つまり、tu (あなたは)が省略されています。
tutissimus は「安全な」を意味する第一・第二変化形容詞 tutus, -a, -um の最上級で、男性・単数・主格です。
この形容詞は、ibis から想定される二人称・単数の主語、tu を修飾することになり、直訳すると、「あなたはもっとも安全な者として・・・」と訳せます。通常、「もっとも安全に」と副詞的に訳します。
medio は形容詞 medius の単数・中性・奪格で、名詞的に使われています。
「真ん中において」という意味になります。
「あなたは真ん中において(真ん中の道を)もっとも安全に行くでしょう。」と訳せます。
一般には、
aurea mediocritas
(黄金の中庸)と同様、中庸を旨とするのがもっとも安全である、という意味で理解されます。
しかし、この一文の出典はオウィディウスの『変身物語』(第二巻、137)であり、そこでは、太陽神が息子パエトンに太陽の馬車を操縦することを許した際の忠告の言葉として語られます。つまり、高すぎず、低すぎず、中間を行くのがもっとも安全である、と言われるのです(が、父の忠告もむなしく、パエトンは操縦を誤り命を落とすのでした。)
In vino veritas.
「イン・ウィーノー・ウェーリタース」と読みます。
前置詞 in の次に名詞の奪格の形(この文では vino)がくると「・・・において」と訳せます。
vino は「葡萄酒」「酒」を意味する名中性名詞 vinum の単数・奪格です。
veritas は「真実」、「真理」を意味する女性名詞の単数・主格で、この文の主語です。
「酒に真実あり。」と訳せます。
大プリーニウス『博物誌』に見られる言葉です。
Docendo discimus.
「ドケンドー・ディスキムス」と読みます。
Docendoは、doceo (教える)の動名詞・奪格の形です。「教えることによって」となります。
discimusは、「学ぶ」を意味する disco の現在・1人称・複数の形です。
「私たちは教えることによって学ぶ。」という意味になります。
Imperare sibi maximum imperium est.
「インペラーレ・シビ・マクシムム・インペリウム・エスト」と読みます。
imperare は、impero (支配する)の不定法・能動相の形です。「命令することは」と文の主語になります。
sibi は再帰代名詞 se の単数・与格で imperare の目的語になります。imperare を併せて「自分自身を支配することは」となります。
maximum は形容詞 magnus (マグヌス)の最上級で imperium にかかります。
imperium (支配)は第二変化名詞、中性・単数・主格で、この文の補語になります。
est は、sum の現在・直説法・能動相、三人称・単数の形で、この文の動詞になります。
「自分自身を支配することは最大の支配である。」という意味になります。
セネカの言葉です。
<補足>以下、覚書です。「人間関係においても、周りの対応の変化を期待するのが一般であるが、自分が変わることが先決。自分が変わると周りの風景も違って見えてくる。態度、言葉、顔つきなど、自分がコントロールできる、つまりimperare できる。今日は、そんな風に考えてみた。いろいろ解釈できるのがラテン語のよいところだ。 」(Jul. 2004)
Veritas liberabit vos.
「ウェーリタース・リベラービト・ウォース」と読みます。
verritas は「真理」を意味する第三変化名詞・単数・主格で主語になっています。
liberabit は「自由にする、解放する」という意味の第一変化動詞 libero の未来・三人称・単数の形です。
vos は「あなたたち」を意味する人称代名詞(二人称複数) vos の対格で、liberabit の目的語です。
「真理はあなたがたを解放する(自由にする)だろう。」という意味になります。
Margaritas ante porcos mittere.
「マルガリータース・アンテ・ポルコース・ミッテレ」と読みます。
margaritas は「真珠」を意味する第一変化名詞 margarita の複数・対格で mittere の目的語です。
ante は「〜の前に」を意味する前置詞で対格をとります。
porcos は「豚」を意味する第二変化男性名詞 porcus の複数・対格です。
mittere は「投げる」を意味する第三変化動詞 mitto の不定法・能動相の形です。
「豚の前に真珠を投げること」が直訳となります。
Avarus ipse miseriae causa est suae.
「アウァールス・イプセ・ミセリアエ・カウサ・エスト・スアエ」と読みます。
avarus は「貪欲な」を意味する第一・第二変化型形容詞・男性・単数・主格ですが、ここでは名詞扱いされています。「貪欲な者は」と訳せます。
ipse は「〜自身」を意味する確定代名詞 ipse の男性・単数・主格の形です。avarus (貪欲な者)を修飾します。
miseriae は「惨めさ」を意味する第一変化名詞 miseria の単数・属格で causa にかかります。
causa (原因)は第一変化名詞の単数・主格で、この文の補語になっています。
est は
sum
の現在・三人称・単数の形です。
suae は、再帰代名詞 suus, -a, -um (自分の)の女性・単数・属格で miseriae と同格になっています。
「貪欲な者は自らが自分の惨めさの原因である」という意味になります。
プブリリウス・シュルスの言葉です。
Si vales, bene est; ego valeo.
「シー・ウァレース・ベネ・エスト。エゴ・ウァレオー」と読みます。
si は接続詞で、「もしも・・・」という条件を表します(英語のif)。
vales は「元気でいる」を意味する第二変化動詞 valeo の現在・二人称・単数の形です。
bene は形容詞 bonus (善い)の副詞の形です。英語の well にあたります。bene est で、「それは善い事である。(It is well.)」となります。
ego は人称代名詞一人称・単数・主格で「私は」を意味します。valeo の主語です。
「あなたが元気なら、それは善い事。私は元気です。」という意味になります。
ラテン語の手紙で「拝啓」に当たる表現です。
O fortunati, quorum iam moenia surgunt!
「オー・フォルトゥナーティー・クゥォールム・ヤム・モエニア・スルグント」と読みます。
fortunati は「幸運な」を意味する第一・第二変化形容詞 fortunatus, -a, -um の男性・複数・呼格で、この場合名詞扱いされています。
「おお、幸運な者達よ。」となります。
quorum は関係代名詞 qui の男性・複数・属格で、先行詞は fortunati です。
iam は副詞で「すでに」という意味です。
moenia は「城壁」を意味する第二変化中性名詞 moenium の複数・主格です。
surgunt は「そびえる」を意味する第三変化動詞 surgo の現在・複数・三人称の形です。
「おお、幸運な者達よ、(その者達の)城壁がすでにそびえている者達は。」という意味になります。
ウェルギリウスの『アエネイス』に見られる言葉です。
Immodica ira gignit insaniam.
「インモディカ・イーラ・ギグニト・インサーニアム」と読みます。
immodica は「過度の」を意味する第一・第二変化形容詞 immodicus の女性・単数・主格で ira にかかります。
ira は「怒り」を意味する第一変化の女性名詞で、単数・主格です。
gignit は「生む」という意味の第3変化動詞 gigno の3人称・単数・現在の形です。
目的語は insaniam です。
insaniam は「狂気」を意味する第一変化名詞 insania の単数・対格です。
全体で「過度の怒りは狂気を生む」という意味になります。
Hannibal erat ad portas.
「ハンニバル・エラト・アド・ポルタース」と読みます。
主語は Hannibal でローマを脅かしたカルタゴの武将の名前です。
erat は sum の未完了過去で、3人称・単数の形です。
ad は「〜に」という場所・位置を意味する前置詞で、次に対格がきます(=対格を支配する)。
portasは「門」を意味する第一変化名詞 porta の複数・対格で、ad とあわせ「門の所に」となります。
全体で「ハンニバルは門の所にいた」となり、いわんとすることは「ハンニバル=危険が門の所=間近に迫っていた」ということです。
Asinus in tegulis.
「アシヌス・イン・テーグリース」と読みます。
asinus は「ろば」を意味する第二変化の男性名詞、単数・主格です。
tegulis は「屋根(がわら)」を意味する第一変化の女性名詞 tegula の複数・奪格です。
「屋根におけるろば」という意味で、珍しいこと、前代未聞の不吉な出来事を言い表す表現です。
Ego nullam aetatem ad discendum arbitror immaturam.
「エゴー・ヌッラム・アエターテム・アド・ディスケンドゥム・アルビトロル・インマートゥーラム」と読みます。
nullam は英語の no を意味する nullus,-a,-um の女性・単数・対格で、aetatem と同格です。
aetatem は「年齢」を意味する aetas の単数・対格です。
discendum は「学ぶ」という意味の動詞 disco の動形容詞で、ad とともに「学ぶために」を意味します。
arbitror は「思う、判断する」を意味します。主語は1人称・単数、すなわち「私」です。
immaturam は「未熟な」という意味の形容詞 immaturus, -a, -um の女性・単数・対格で aetatem と同格です。
arbitror の直接目的語が aetatem、その補語が immaturam である、と考えられます。言い換えますと、Ego が arbitror する内容は、「nullam aetatem が immaturam であること(←不定法 esse が省略)」です。
「私はいかなる年齢も学ぶのに若すぎることはないと思う。」という意味になります。
エラスムスの言葉です。
Dii a nullo videntur, ipsi autem omnia vident.
「ディイー・アー・ヌッロー・ウィデントゥル・イプシー・アウテム・オムニア・ウィデント」と読みます。
Dii は「神」を意味する名詞 deus の複数・主格でこの文の主語です。
nullo は nullus (英語の nobody に相当)の単数・奪格で、 a とともに用いられると「誰によっても・・・・ない」となります。
videntur は video (見る)の複数・三人称の形です。
ipsi は「・・・自身」を意味する代名詞で、この文では dii の補語として「(神々)自身は」を意味します。
autem は接続詞で「一方」を意味し、先行する文との対比を表します。
omnia は「すべて」を意味する第三変化形容詞 omnis の複数・中性・対格です。
vident は「見る」を意味する動詞 video の三人称・複数形で、omnia を目的語とします。
「神々は誰によっても見られないが、自らはすべてを見ている。」という意味になります。
Nihil sine magno vita labore dedit mortalibus.
「ニヒル・シネ・マグノー・ウィータ・ラボーレ・デディト・モルターリブス」と読みます。
主語は vita(人生)、動詞は dedit(与えた)、直接目的語は nihil (無)、間接目的語は mortalibus (人間たちに)。
sine は奪格を支配する前置詞で、「〜なしに」の意味を持ちます。ここでは、magno...labore と一緒になって「大きな苦労なしに」となります。
全体をあわせると、「人生は人間たちに大きな苦労なしに何も与えない」という意味になります。
時制は「
完了
」ですが、一般的真理を述べる表現と見なせます。
ホラーティウス
の表現です。
Vixi et quem dederat cursum fortuna peregi.
「ウィークシー・エト・クエム・デーデラット・クルスム・フォルトゥーナ・ペレギー」と読みます。
「私は生きた(vixi)。そして(et)運命が(fortuna)与えた(dederat)(とこ ろの=quem)道程を(cursum)最後まで進んだ(peregi)。」と訳せます。
vixi は「生きる」を意味する動詞 vivo の
完了
・一人称・単数の形です。
quem (関係詞)の先行詞は cursum (cursus の単数・対格)です。
peregi (「私は最後まで歩き抜いた」)は perago の
完了
・一人称・単数の形です。
peregi の目的語はcursum です。
dederat (do の
過去完了
・単数・3人称)の主語は fortuna です。
ウェルギリウス(『アエネーイス』4.653) の表現です。
<補足>ディードーの言葉です。ラテン語では、「生きる」という言葉の完了形が死を意味する点に注意します。文字通り死とは生をパーフェクトなものにするということでしょう。
Brevis esse laboro, obscurus fio.
「ブレウィス・エッセ・ラボーロー・オブスクールス・フィーオー」と読みます。
laboro の形からわかるとおり、主語は1人称・単数、すなわち「私は」です。
laboro は「私は努力する」という意味で、この文のように不定法(esse)をとります。
esse は sum (・・・である)の不定法で、この文では brevis (短い)という保護をともない、「短くあること」と訳せます。
laboro とあわせると、前半は、「私は短くあることを努力する。」となります。
obscurus は英語の obscure (曖昧な)でおわかりのとおり、「曖昧な」という意味の形容詞(第一・第二変化)男性・単数・主格です。laboro で想定される主語 ego と性・数・格は一致しています。
fio は不規則変化動詞で「私は・・・になる」の意味です。この文では、obscurus が補語となり、「私は曖昧になる」と訳せます。
全体をまとめると、「私は短くあるように努めるが、曖昧になる。」となります。
これは、ホラーティウス『詩論』(25)の表現で、詩作において簡潔さを狙うと、文が曖昧になり意味がわかりにくくなるという弊害を述べたものです。
Cui placet obliviscitur, cui dolet meminit.
「クィー・プラケット・オブリーウィースキトゥル・クィー・ドレト・メミニト」と読みます。
cui は関係代名詞、男性・単数・与格の形です。与格になるのは、非人称動詞 placet の目的語(placet は与格を支配)になっているからです。
placet は、元来「喜ばせる」という意味を持ちますが、ここでは非人称表現となり、「状況がその人を喜ばせる」=「喜ぶ、嬉しく思う」という意味になります。
先行詞(男性・単数・主格)が省略されています。placet とあわせると、「喜ぶ人は」、「嬉しく思う人は」となります。
obliviscitur は、「忘れる」を意味する形式所相動詞(デポーネント)obliviscor の現在・能動相・3人称・単数です。
前半の訳は、「喜ぶ人は忘れる」となります。
後半の cui の導く動詞 dolet は「悲しむ」の意味を持つ第二変化動詞 doleo の3人称・単数の形です。後半の主語は「悲しむ人は」という意味になります。
後半の述語は meminit (覚えている)ですが、これは完了時制でしか現れない特殊な動詞です。
辞書では、memini (メミニー)の見出しで見つかります。
全体をまとめると、「喜ぶ人は忘れ、悲しむ人は覚えている。」という意味になります。
キケローの言葉です。(ムーレーナ弁護演説42)
Justitia sine prudentia multum poterit; sine justitia nihil valebit prudentia.
「ユースティティア・シネ・プルーデンティアー・ムルトゥム・ポテリト・シネ・ユースティティアー・ニヒル・ウァレービト・プルーデンティア」と読みます。
全体を逐語訳すると、「正義は(justitia)知恵を伴わなくても(sine prudentia)大いに(multum)力を持つだろう(poterit)。(だが)、正義を伴わなければ(sine justitia)、知恵は(prudentia)まったく力を持たないだろう(nihil valebit)。」となります。
前半の文の主語は、justitia 、後半の文の主語は prudentia となります。
前半、後半ともに動詞の時制は未来です。すなわち、poterit は不規則変化動詞 possum の、また、valebit は valeo のそれぞれ直説法・能動相・未来・3人称・単数の形です。
前置詞 sine は「・・・なしに」を意味し、奪格を支配します(sine の次には奪格の形がくるという意味)。
multum は英語の much 同様「たいへん」、「非常に」という意味を持つ副詞です。
後半の nihil ですが、この文では「全然・・・ない」、「まったく・・・ない」といった意味を表しています。
キケロー『義務について』第二巻、9.34 に見られる言葉です。
nam risu inepto res ineptior nulla est.
「ナム・リースー・イネプトー・レース・イネプティオル・ヌッラ・エスト」と読みます。
ラテン語の単語と対応させながら訳すと、「実際(nam)いかなるものも(res...nulla)場違いな(inepto)笑い以上に(risu)場違いなものは(ineptiror)何もない。」となります。
res は nulla とともにこの文の主語になっています。
nulla は第一・第二変化形容詞 nullus, -a, -um の女性・単数・主格で res にかかります。res は英語の thing の意味を持ち、nulla は英語の no に当たりますので、両者をあわせると、文字通り nothing と同じ意味を持つと考えて良いでしょう。
この文の動詞は est です(sum の現在・三人称・単数)。
補語に相当する形容詞は ineptior ですが、これは ineptus の比較級(女性・単数・主格)です(比較級の変化において、男性と女性は同じ形です)。
risu inepto についてですが、まず risu は「笑い」を意味する第4変化名詞 risus の男性・単数・奪格です。
inepto (場違いな)は risu を修飾する形容詞として、risu と性・数・格が一致しています。
risu が奪格になる理由は、この言葉が比較の対象となっているからです。英語ですと、比較級 + than + A となるのですが、ラテン語ではこのように奪格一語で、英語の than + A を言い表すことができます。
risu inepto だけを訳せば「場違いな笑いよりも」となります。
カトゥルス『詩集』第39、16に見られる言葉です。
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