ラテン語格言集 (5)
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Graecia capta ferum victorem cepit.
グラエキア・カプタ・フェルム・ウィクトーレム・ケーピト。
Graecia は、「ギリシア」を意味する第一変化名詞、女性・単数・主格です。
capta は、「捕らえる」という意味の第三変化動詞、capio の完了分詞の女性・単数・主格の形です。Graecia を修飾しています。
ferum は、「荒々しい」という意味を持つ第一、第二変化形容詞(辞書の見出しは ferus)の男性・単数・対格です。victorem を修飾します。
victorem は、「勝者」を意味する第三変化名詞、victor の男性・単数・対格です。
cepit は、これまた「捕らえる」を意味する第三変化動詞、capio の変化形(
完了
)です。「捕らえた」となります。この文では「魅了する」という意味で使われています
まとめると「捕らえられたギリシアは、野蛮な勝利者を捕らえた」という意味です。
武力においてイタリアに征服されたギリシアは、野蛮な勝利者イタリア人を、文化の面で魅了した(征服した)という意味です。
ホラーティウス
の残した言葉です。
Hora fugit.
「ホーラ・フギト」と読みます。
Hora は「時間」を意味する第一変化名詞の単数・主格です。
fugit は「逃げる」という意味の第三変化動詞 fugio の単数・3人称・現在の形です。
「時間は逃げ去る」という意味になります。
英語だと「時間は飛ぶ」(Time flies)となりますね。
<補足>hora は英語の hour の語源です。fugit は「逃げる」という意味で、時間がどんどんすぎていく様子を表現した、ある意味でありきたりな言葉です。でも、語呂がいいですね、ホーラ・フギト。時間をテーマとしたミヒャエル・エンデの『モモ』に、マイスター・ホラという人物が出てきますが、このラテン語 hora と関係しています。
モモ―時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語 (岩波少年少女の本 37)
Michael Ende 大島 かおり
Amor ex oculis oriens in pectus cadit.
「アモル・エクス・オクリース・オリエンス・イン・ペクトゥス・カディト」と発音します。
amor は「愛」を意味する男性第三変化名詞の単数主格です。
oculis は「目」を意味する男性第二変化名詞の複数奪格で、ex oculisで、「目から」という意味になります。
oriens は、「昇る、生まれる」の意味を持つ「形式所相動詞」orior の現在分詞で単数主格の形です。amor を修飾しています。
pectus は、「胸」を意味する中性の第三変化名詞の単数対格です。前置詞inと対格が結びつけられると、「・・・の方へ」という意味を持ちます。ここでは、「胸の中に」と訳せます。
cadit は、「落ちる」という意味を持つ第三変化動詞 cado の三人称単数の形です。主語は Amor です。
「愛は目から生まれ胸に落ちる」という意味になります。
Cognosce te ipsum.
「コグノスケ・テー・イプスム」と発音します。
cognosce(コグノスケ)は、「知る」という意味の第三変化動詞の命令法ですから、「知れ」となります。
te は、「人称代名詞」tu の対格で、「あなたを」となります。
ipsum は、te を強調する「強意代名詞」男性・単数・対格です。「自身を」となります。
「汝自らを知れ」という意味です。
デルポイの神殿に刻まれたギリシア語(グノーティ・セアウトン)のラテン語訳です。
Divide et impera.
「ディーウィデ・エト・インペラー。」と発音します。
divide は、「分割する」を意味する第三変化動詞 divido の命令法・能動相・現在・二人称・単数となります。
impera は、「命令する」という意味の第一変化動詞impero の
命令法
です。
「分割して統治せよ」という意味になります。
英語の divide と綴りは同じですが、ラテン語の divide は命令法の形です。ディバイドと小難しく発音するのではなく、小学校で習うローマ字どおり、ディビデでオーケーです。残りも、エト・インペラーでよいです。あと、impera の綴りを見て、imperial を連想された方は、勘が鋭いですね。「支配する」という意味の動詞impero の命令法が impera です。全部をあわせると、「分割せよ、そして、支配せよ。」というのが上のラテン語の直訳です。ラテン語は、発音も、文法も思いの外シンプルです。
Ora et labora.
「オーラー・エト・ラボーラー。」と発音します。
ora は、「祈る」という意味の第一変化動詞oroの命令法、labora も、「働く」を意味する第一変化動詞laboroの命令法です。
「祈れ、そして働け」という意味になります。
labora の綴りの中に ora が含まれている点にご注意下さい。発音もきれいに響きます。
Errare humanum est.
エッラーレ・フーマーヌム・エスト。
errare は「間違う」という意味の第一変化動詞 erroの不定法で、この文の主語になっています。
humanum は「人間的な」という意味の形容詞、中性・単数・主格です。
この単語は、不定法(errare)の補語となっています。一般に不定法は、中性・単数・主格扱いします。
「過ちを犯すことは人間的なことである」という意味になります。
In tenui labor, at tenuis non gloria.
イン・テヌイー・ラボル・アト・テヌイス・ノーン・グローリア。
tenui は第三変化形容詞 tenuis(小さい)の男性・単数・奪格です。修飾する名詞は省かれ、in と組み合わされて「小さいものの中に」となります。
labor は「労働」「仕事」という意味をもつ第三変化名詞の単数主格です。文の主語になっています。動詞 est は省略されています。
「仕事は小さなものの中に存在する」というのが直訳になります。
atは接続詞で「しかし」という意味です。
gloria は「栄光」を意味する第一変化名詞の単数・主格です。後半の文の主語になっています。
補語は tenuis です。
「仕事は小さなことがらを対象とするが、得られる栄光は小さくない。」という意味になります。
ウェルギリウス
の『農耕詩』に見られる言葉です。
Per aspera ad astra.
「ペル・アスペラ・アド・アストラ」と発音します。
per(ペル)は対格を支配する前置詞で、「を通って」「貫いて」「を通じて」といった意味をもちます。
aspera は、「困難な」を意味する第三変化形容詞で、中性・複数・対格です。ここでは中性名詞としての意味を持ち、perとあわせて「困難を通じて」と訳します。
ad も対格を支配する前置詞で、「の方へ」の意味を持ちます。
astra は「天、星座」を意味する第二変化名詞 astrum の複数対格です。ad とあわせて「天へ」となります。
全体で、「困難を通じて天へ」と訳します。
「困難を克服して栄光を獲得する」という意味になります。
Post nubila Phoebus.
「ポスト・ヌービラ・ポエブス」と発音します。
post は対格を支配する前置詞で「後、後ろに」という意味です。英語でいえば、空間的前後関係を示すbehindと、時間的前後関係を示すafterの2つの意味を併せ持ちます。
nubila は「雲」を意味する第二変化名詞 nubilum の複数対格です。
Phoebus は、太陽神アポロと、太陽の2つの意味を持ちます。
動詞は省略されていますが、「雲の後に太陽(が輝く)」と訳すことができます。
一方、post を空間的前後関係を示す前置詞ととれば、「雲の後ろに太陽(が存在する)」とも考えられます。
雨を降らせる雲が空を覆っていても、私たちは太陽の存在を疑うことができないように、世の中を不正がいかに曇らせても、我々は善の存在を信じることができるという趣旨でも理解可能です。
Quandoque bonus dormitat Homerus.
「クァンドークェ・ボヌス・ドルミータト・ホメールス」と発音します。
Quandoque は「ときどき」を意味する副詞です。
bonus は「すぐれた」を意味する第一・第二変化形容詞 bonus の男性・単数・主格で、Homerus(ホメールス)を修飾しています。
dormitat は「眠る」を意味する第一変化動詞 dormito の現在三人称単数の形です。
「ときどき立派なホメールス(ホメーロス)も居眠りをする」という意味です。
ホラーティウスの言葉です。
Beatius est magis dare quam accipere.
「ベアーティウス・エスト・マギス・ダレ・クァム・アッキペレ」と発音します。
Beatius は「幸福な」という意味の第一・第二変化形容詞の比較級の形で、中性・単数・主格です。(この文の補語です。)
est は「である」を意味する不規則動詞 sum の現在三人称単数です。
magis は「より多く」を意味する副詞でdare(ダレ)を修飾します。
dare は「与える」を意味する動詞do の不定詞です。この文の主語になっていま す。
quam は「AよりもB」の構文で用いる接続詞で、「よりも」を意味します。
accipere は「受け取る」を意味する第三変化動詞の不定詞です。
全体をまとめると、「受け取るよりも多く与えることのほうが幸いである。」という意味になります。
Vive hodie.
「ウィーウェ・ホディエー」と発音します。
vive は「生きる」を意味する第三変化動詞 vivo の命令法で、「生きよ」と訳します。
hoide は副詞で、「今日」を意味します。
あわせて「今日、生きよ」となります。
Natura duce nunquam aberrabimus.
「ナートゥーラー・ドゥケ・ヌンクァム・アベッラービムス」と発音します。
最初の単語はnatura と読みます。第一変化名詞・単数・奪格というわけです(主格ではないので、語末のaを伸ばします)。
duce は「指導者」を意味する第三変化名詞 dux の単数・奪格です。
natura, duce と奪格が2つ並んでいます。「絶対的奪格」と呼ばれる用法です。
「natura イコール duce の関係を伴うとき」、すなわち、「自然を指導者とするなら」、「自然に従えば」の意味になります。
nunquam(ヌンクァム)は「決して・・・ない」という意味を表す副詞です。
aberrabimus は、「誤る」を意味する第一変化動詞 aberroの直説法・未来・一人称・複数の形です。
「自然を導き手とすれば、我々は決して誤ることはないだろう。」という意味になります。
Vitium alitur tegendo.
「ウィティウム・アリトゥル・テゲンドー」と発音します。
vitium 第二変化名詞・中性・単数・主格で、「欠点」という意味です。
alitur は「育む」を意味する第三変化動詞aloの受動相・三人称・単数の形です。
tegendo は「隠す」を意味する第二変化動詞tegeoの動名詞・奪格の形です。「隠すことによって」となります。
「欠点は隠すことによって育てられる」となります。
Nemo deo pauper est.
「ネーモー・デオー・パウペル・エスト」と発音します。
nemo は、「何人も・・・ない」。英語ですとno oneにあたります。
中性・主格には、nihil(ニヒル)という形があります。
deo は「神」を意味する第二変化名詞deusの単数・与格で、「神にとって」となります。
与格の基本的用法として、「・・・にとって」という意味を持ちます。
pauperは「貧しい」を意味する第三変化形容詞の単数・主格の形です。
「神にとって誰一人貧しいものはいない。」という意味になります。
Plaudite, acta est fabula.
読み方は、「プラウディテ・アクタ・エスト・ファーブラ」となります。
plauditeは第三変化動詞plaudo(拍手する)の命令法・能動相で、「拍手せよ」となります。
actaは「行う、なす」を意味する第三変化動詞agoの完了分詞で、estと組み合わされて、完了の受動相を表します。
主語はfabula(第一変化名詞)で「芝居」を意味します。
「拍手を。お芝居はおしまいだ。」という意味です。
アウグストゥスの臨終の言葉と伝えられます。
Dum loquor, hora fugit.
「ドゥム・ロクォル・ホーラ・フギト」と発音します。
dumは「・・・する間」を意味する接続詞です。
loquor は「私は語る」を意味する動詞です。みかけは受動相ですが、意味は能動になる「形式所相動詞」(デポーネント)です。
hora は「時」を意味する第一変化名詞・単数・主格です。
fugit は「逃げる」(不定法はfugereゆえ第三変化動詞)という意味になります。三人称・単数・現在・能動相です。
「私がおしゃべりする間に、時は逃げ去る。」となります。
オウィディウス
の言葉です。
Merentem laudare justitia est.
「メレンテム・ラウダーレ・ユースティティア・エスト」と発音します。
「・・・に値する」を意味する動詞mereoの現在分詞・単数・対格が merentemです。
laudare は「ほめる」という意味の第一変化動詞・不定法・現在の形で、この文の主語になります。
justitia は「正義」という意味の第一変化名詞・単数・主格で、この文の補語です。
「(ほめるに)値する者を(=merentem)ほめることは(=laudare)正しいこと(=justitia)である(=est)。」と分析できます。
この言葉を読むと、逆に、「値しない者」をほめる言葉が少なくない、と感じます。このことを、孔子は「巧言令色すくなし仁」と述べたわけです。古典を読めば、時代を超えて称賛すべきものは何か、自ずと見えてきます。その結果、心がおのずと穏やかになります。似たような感覚は、幼児と接していても感じられます。無心に遊ぶ子どもの姿を見ていると、心のこわばりがとれる思いがします。これは不思議な感覚で、子どもこそ、巧言令色ぬきの世界に生きていると実感します。子どもと心を通わせる言葉のやりとりができたなら、それは本物ですね。
Tu fui, ego eris.
「トゥー・フイー・エゴ・エリス」と発音します。
Tu=you、ego=I という意味の人称代名詞で、ともに主格です。
ラテン語の主格は、主語にも補語にもなります。
fui は sum の完了・一人称・単数です。
eris は sum の未来・二人称・単数です。
「私はあなたであった。あなたは私になるだろう。」(=私も昔はあなたのように生きていた。あなたもやがて私のように息を引き取るだろう)というなぞなぞのような表現です。
Tu と ego は主語ではなく補語と考えるのがこつです。
墓碑銘に刻まれる言葉として知られています。
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