ラテン語格言集 (4)
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Virtus laudata crescit.
「ウィルトゥース・ラウダータ・クレスキト」と読みます。
virtus は、美徳、勇気を意味する第三変化・女性名詞です。
laudo(褒める)の完了分詞が laudatus,-a,-um となります。
laudata となるのは、virtus が女性の単数・主格の形なので、性・数・格を一致させるためです。
cresco は、「成長する」という意味です。
「美徳は、称えられて、成長する」と訳せます。
よいものをよいと口に出していうことは簡単なようで難しいです。他人の 批判を恐れるからでしょう。批判(文句)は威勢良く言えるのですが、肯定的な意見を述べるには勇気が必要です。
Dum vitant stulti vitia, in contraria currunt.
「ドゥム・ウィータント・ストゥルティ・ウィティア・イン・コントラーリア・クッルント」と読みます。
dum は 「〜している間に」を意味する接続詞です。
stulti は、第1・第2変化形容詞 stultus「愚かな」の男性・複数・主格で、名詞扱いします。この文では、「愚か者たちは」という意味になります。
vitant は、動詞 vito「避ける」の現在・三人称・複数の形で、主語は stulti です。
vitia は中性名詞 vitium 「悪徳」の複数対格です。
contraria は中性名詞 contrarium 「反対」の複数対格です。
currunt は動詞 curro「走る」の現在・三人称・複数で、主語は stulti です。
「愚か者は、悪徳を避けようとして、反対の悪徳へ走り込む」と訳せます。
愚かである限り、悪徳から逃れられない宿命である、ということでしょうか。嘘をごまかそうとして、新たな嘘を重ねていくということも意味していると思います。
Fama volat.
「ファーマ・ウォラト」と読みます。
famaは「噂」の意。「名声」という意味もあります。ここでは主格・単数です。
volo は「飛ぶ」の意。3人称単数の形が、volat です。
「噂は飛ぶ。」
なお、fama は名声とも解せます。fama は英語の fame の語源です。
Amoris vulnus idem sanat, qui facit.
「アモーリス・ウルヌス・イーデム・サーナト・クィー・ファキト」と読みます。
最後の facit(←facio:to make) の次には vulnus(=wound, 中性単数対格)が省略されています。
qui(関係詞)の先行詞は、idem です。
「恋の傷をつくった同じ人が、(恋の傷を)癒すことができる。」と訳せます。
「自分に恋の傷を負わせた相手でないと、その傷は癒すことはで きない」くらいの意味になります。
出典はプブリリウス・シュルスです。
Nunquam periculum sine periculo vincemus.
「ヌンクァム・ペリークルム・シネ・ペリークロー・ウィンケームス。」と読みます。
nunquam(副詞,)決して〜ない
periculum(中性・単数・対格)危険。 periculo は、単数・奪格。
sine(前置詞)は「〜なしに」を意味します。奪格支配です。
vincemus(vinco の複数・一人称・未来)打ち勝つの意味です。
「我々は危険(をおかすこと)なしに、危険に打ち勝つことは決してないだろう。」と訳せます。
「虎穴に入らずんば虎児をえず」という言葉を思い出します。
「義を見てなさざるは、勇なきなり」という孔子の言葉も連想します。
Fortuna adversa virum magnae sapientiae non terret.
「フォルトゥーナ・アドウェルサ・ウィルム・マグナエ・サピエンティアエ・ノーン・テッレト。」と読みます。
adversa < adversus: 「反対の」の女性・単数・主格です。
virum < vir(単数・対格)人間、男。:terret の目的語です。
magnae < magnus(形容詞・女性・単数・属格):sapientiae にかかります。
sapientiae < sapientia(magnaeと同格)知恵。:virum にかかる属格で、virum の性格を示す働きをしています。
terret < terreo(単数・三人称・現在)脅かす。
「逆境(反対の運命)は、大いなる知恵を持つ人を脅かさない。」という意味になります。
Bonae leges malis ex moribus procreantur.
「ボナエ・レーゲース・マリース・エクス・モーリブス・プロークレアントゥル。」と読みます。
procreo は、「生み出す」という意味です。受動相ですから、 「生み出される」となります。
bonaeは善いという意味、leges<lex(法律)にかかります。
malis...moribusは、「悪い習慣」となります。malus=bad, mos>moribus(複数・奪格)。
Macrobius Theodosiusの言葉。
「良い法律は悪い習慣から生まれる。」という意味になります。
解釈はいろいろ可能かと思います。たとえば、芝生に立ち入る人がいるので、「立ち入り禁止」という標語が生まれます。本当は、芝生には何も立て札がないほうがいいわけです。
この逆説については、老子の「大道廃れて仁義あり」という言葉を連想します。
Pios et probos praemium vitae aeternae exspectabit.
「ピオース・エト・プロボース・プラエミウム・ウィータエ・アエテルナエ・エスクペクタービト。」と読みます。
pius(敬虔な)の複数・対格が pios で、この文では名詞的に使われています。
probos(善い)も、probus の複数・対格です。
praemium(報酬)が、この文の主語です。
vitae aeternaeで、「永遠の生」(単数・属格)、praemium にかかります。
「説明の属格」になり、「永遠の生という報酬が・・」となります。
exspecto は「待ち受ける」。ここでは未来・単数・三人称の形が使われています。
「永遠の生という報酬が、敬虔で善良な人々を待ち受けるであろう。」と訳せます。
Vulgus amicitias utilitate probat.
「ウルグス・アミキティアース・ウーティリターテ・プロバト。」と読みます。
vulgus は、大衆の意味です。この文の主語。
amicitias は amicitia(友情)の複数・対格です。
utilitate は utilitas(便宜)の単数・奪格です。手段の奪格。
probat は probo(認める)の単数・3人称・現在の形。
「大衆は、友情を、便宜によって是認する。」と訳せます。
多くの人は、自分に便宜を図ってくれる、都合のいい人を友達にしたがる、という意味でしょう。
Beatus ille, qui procul negotiis paterna rura bobus exercet suis.
「ベアートゥス・イッレ・クィー・プロクル・ネゴーティイース・パテルナ・ルーラ・ボーブス・エクセルケト・スイース。」と読みます。
beatus=happy. ille との間に est(〜である)が省略。
ille=he(彼)。qui 以下が修飾。「qui 以下の人は幸福である。」
procul negotiis(煩わしさを離れて)procul は奪格を支配。
paterna<paternus(父祖伝来の)は、rura<rus(田舎)と性・数・格を一致しています。
bobus は bos(牛)の複数・奪格。手段を示します。suis<suus(自分の)が修飾。
exercet<exerceo は、耕すという意味で使われています。
「喧騒を離れ、父祖伝来の田舎の土地を、自分の牛を使って耕す者は、幸いである。」と訳せます。
ホラーティウスの言葉です。
Occasio non facile offertur sed facile amittitur.
「オッカシオー・ノーン・ファキレ・オッフェルトゥル・セド・ファキレ・アーミッティトゥル。」と読みます。
occasio は「機会」、offertur、amittitur の主語。
facile は副詞、「容易に」の意。
offertur < offero(与える)の現在・受動相・3人称・単数。
amittitur < amitto(失う)。
「機会は簡単に与えられるものではなく、すぐに失われるものである。」と訳せます。
プブリリウス・シュルス『金言集』644より。
Nemo fortunam jure accusat.
「ネーモー・フォルトゥーナム・ユーレ・アックーサト」と読みます。
nemo は、nobody の意味。
fortunam < fortuna(運命)の単数・対格。
jure は副詞で、「正当に」。
accusat < accuso(非難する)の単数・3人称・現在。
「誰も運命を正当に非難できない。」と訳せます。
Ars longa vita brevis.
「アルス・ロンガ・ウィータ・ブレウィス」と読みます。
ars は英語で art ですが、広く「技術」という意味をもちます。
longus(長い)という形容詞が ars(女性・単数・主格)を修飾しています。
動詞 est が省略されています。「ars は longa である」となります。
vita は「人生、生活、命」という意味です。
brevis は vita を修飾する第三変化の形容詞です。
「技術は長く、人生は短い」と訳します。
元はヒポクラテスのギリシア語です。アルス(ギリシア語でテクネー)は医術のことで、それを習得するには人生はあまりに短かすぎるという趣旨の言葉でした。
一方、この表現が英語に入ると Art is long, life is short. と訳されることにより、art の意味を「芸術」と理解するようになりました。「芸術は長く、人生は短し」と訳されることが多いです。
Omnia vincit Amor.
「オムニア・ウィンキト・アモル」と読みます。
omnia は「すべて」を意味する形容詞 omnis の中性・複数・対格です。
vinco(打ち勝つ)の3人称・単数・現在の形が vincit で、主語は Amor です。
Amor が大文字で表記されるのは「愛の神」を意味するためです。
「愛はすべてに打ち勝つ」と訳せます。
ウェルギリウスの『牧歌』に見られる言葉です。
ちょっと意外な意味で使われています。「愛があればあらゆる困難に打ち勝てる」という意味ではなく、愛の神はすべて(理性的な人間も何もかも)を打ち負かすことができる、という意味です。
牧歌/農耕詩 (西洋古典叢書)
小川 正広
Odi et amo.
「オーディー・エト・アモー。」と読みます。
odi(オーディー)は、
完了
の形ですが、意味は現在として訳します。→「私は憎む。」
amo(アモー)はいうまでもなく、「私は愛する。」etは英語のandの意味です。
「私は憎み、そして愛する。」と訳せます。
矛盾した心を簡潔に表しています。
ローマの恋愛詩人
カトゥッルスの言葉
です。
Amantes, amentes.
「アマンテース・アーメンテース」と読みます。
amantesはamoの現在分詞・複数・主格の名詞化したもの(=「愛する者は」)です。
amentesは、第三変化形容詞amens(アーメンス)の複数・主格で、この文の補語になっています。
動詞sunt(sumの複数・3人称)が省略されています。
「愛する者は正気なし。」と訳せます。
ローマの喜劇作家、テレンティウスの言葉です。
ローマ喜劇集〈5〉 (西洋古典叢書)
木村 健治 谷 栄一郎 上村 健二 山下太郎
Nihil difficile amanti.
「ニヒル・ディッフィケレ・アマンティー」と読みます。
nihil は英語でいえば、nothing にあたる言葉です。この文の主語になっています(中性・単数・主格)。
補語が形容詞 difficile です。主語と格変化を一致させるため、これも中性・単数・主格の形となっています。
動詞 est が省略されています。
amanti は第一変化動詞 amo の現在分詞 amans の男性・単数・与格です。「愛する者にとって」となります。
「愛する(恋する)者には何事も困難ではない。」と訳せます。
キケローの『弁論家について』に見られる言葉です。
弁論家について〈上〉 (岩波文庫)
Cicero 大西 英文
Quis fallere possit amantem?
「クィス・ファッレレ・ポッシト・アマンテム」と読みます。
quisは英語のwhoに相当します。この文の主語です。
fallere は動詞 fallo(欺く)の不定法です。
possitは不規則動詞 possum(〜できる)の接続法・現在・3人称・単数の形です。この接続法は、「そんなことがありえようか(いやない)?」という反語を用意するためのものです。
amantemは、amoの現在分詞 amans の男性(女性)・単数・対格です。「愛する者を」と訳せます。
「愛する者をだれが欺くことができるだろう。」という意味です。
この文は、「いくら欺こうとしても、恋人にはピンとくる」という意味で、ウェルギリウスの『アエネイス』第4歌(296行)に出てきます。amantem はDido(カルタゴの女王)を指しています。
Gutta cavat lapidem non vi sed saepe cadendo.
「グッタ・カウァト・ラピデム・ノーン・ウィー・セド・サエペ・カデンドー」と読みます。
gutta(滴)、cavo(穴をあける)、lapis,-dis(岩)、vis(力)、cado(落ちる)といった単語が使われています。
non A sed B(AではなくB)の構文に注意してください。
viはvisの単数・奪格になります。
cadendoはcadoの「動名詞」の形です。cadendo自体、奪格になります。
直訳すれば、「滴は岩に、力によってではなく、何度も落ちることによって、穴をあける。」となります。
Aurea mediocritas.
「アウレア・メディオクリタース」と読みます。
「黄金の中庸」と訳します。
ホラーティウスの言葉
です。
mdeiocritas(メディオクリタース)は、「中庸」を意味する第三変化名詞の単数・主格です。性は女性です。
したがって、「黄金の」という意味を持つ第一、第二変化形容詞 aurea(アウレア)も、女性・単数・主格の形にそろえています。
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