ことばの歴史をたずねる旅

ラテン語を学ぶって?

高校生の方からラテン語に関して次のようなメールをいただきました。


「人はなぜはたらくのか」

西洋の古典文学には、教訓詩とよばれるジャンルがあります。


テレンティウス『兄弟』の解説

京都大学学術出版会刊『ローマ喜劇集』の巻末に書いた解説の全文です。


Latin Dictionary Founded on Andrew's Edition of Freud's Latin Dictionary

Charlton T. Lewis

片手で持ち運びできるかどうか、ぎりぎりの大きさ、重さです。大きいサイズの広辞苑と同じくらいでしょうか。グレアが出るまではオックスフォードのフラッグシップでした。グレアのほうが紙質、印字の鮮明さでも軍配があがりますが、個人的には大変愛着のある辞書です。


Oxford Latin Dictionary (DICTIONARY)

P. G. W. Glare

現在望みうる最高のラテン語辞書です。ただし、両手を使わないと持ち運べません(笑)。研究室用に最適。個人でも気長にラテン語につきあいたい人、本物志向の方にはお勧めできます。


Collins Gem Latin Dictionary: Latin-English English-Latin (Collins Gem)

HarperCollins

ラテン語-英語、英語-ラテン語の辞書。世界一小さなラテン語辞書でもあります。通勤、通学のお供に1冊あると便利です。


民主主義

民主主義とは何かということに関しては、夥(おびただ)しい数の図書があるが、リンカーン大統領の残した「人民の人民による人民のための政治」という定義 は今も新鮮さを失わない。デモクラシー(democracy)は、「デーモクラティア」(demokratia)というギリシア語に遡る言葉であるが、ギリシア語本来の意味に注意すれば、「民衆による(デーモス)支配(クラトス)」という意味になる。

これに対して「貴族」は「最善の者」、すなわち「アリストス(aristos)」と呼ばれたため、「民主政治(democracy)」に対する「貴族政治」は「アリストクラシー(aristocracy )」といわれる。同様に、「専制政治」は autocracy 、「衆愚政治」は mobocracy 、「独裁政治」は monocracy 、「金権政治」は plutocracy と呼ばれる。これらの単語を識別するポイントは、言うまでもなく -cracy の前につく言葉に着目することである。

ところで、「官僚政治」を意味する英語はビューロクラシー(bureaucracy)であるが、bureau(ビューロウ)は「官僚」でなく 「事務机」を意味している。つまり、何でも机上で処理するお役所的体質を揶揄した言葉がビューロクラシーというわけである。

ちなみに官僚の「天下り」は英語で golden parachute (ゴールデン・パラシュート)と表現される。この英語表現に gold(金)が含まれている点も見逃せないが、対する日本語表現(天から下る?)をよく吟味すると、官と民の対比を「天」と「地」になぞらえているようで、冷静に考えればおかしな表現である。

というのも、「官僚」や「役人」は英語で (government) official と呼ばれるが、役所で働く者は皆、総理大臣(prime minister)も含め、civil servant (公務員)に相違ないからである。civil(市民の)はラテン語で「市民」を意味する civis (キーウィス)に由来するが 、一方の servant は serve (サービスする)者、すなわち「奉仕者」を意味することは自明である。(さらに言えば「奴隷」を意味するラテン語 servus に由来する。)

なお、「総理大臣」ないしは「首相」を意味する prime minister は、ラテン語起源の言葉である。prime は「第一の」という意味の primus (プリームス)に由来し、minister は「従者」を意味するラテン語 minister(ミニステル)がそのまま英語に取り入れられたものである。従って、prime minister を語源に留意して直訳すれば、「第一の僕(しもべ)」という意味になる。

かりに国の政治に問題があるとすれば、その責任は監督者たる「国民」の側にある。教育は「国民」が賢明になるために用意されるべきものであり、きわめて社会的な意味をもつ。現状は利己的な学びが奨励されることにより、政治に対する無関心が助長されているのではないだろうか。