タイトルは、「ラテン語講習会の文法を終えた人のために」としてもよいのですが、要は、ひととおりラテン語文法の概要がつかめた人にとって、次の一歩をどう踏み出すかについて、私なりに思うことを以下に述べます。

文法を学ぶ目的の一つは原文を読むことだと思う。ラテン語の文法自体に興味を持つ人も多いが、文法はそこそこにして、原文の世界に飛び込むのはあり、というか、ラテン語の場合はむしろそれが王道のように思う。

ただし、最初は研究者用の注釈書でなく欧州の高校生向けの教材を使うのが吉である。そういう本には巻末に語彙集がついている。一つの作品に出てくる語彙がすべて網羅されている。一語にいくつもの訳語がある場合、第何節の使い方はこの意味だ、というところまで情報として載っている。

日本でも、入試対策用の古文、漢文の教材というのがあって、この単語は「連用形」だとか、この文での意味はこれこれだ、ということが細かく丁寧に説明されている。要は、その西洋古典バージョンが、今述べた教材だと言えるだろう。使わぬ手はない。

Vergil: Aeneid IX (Bristol Latin Texts Series)
J. Whiteley
0906515386
(これはウェルギリウスの『アエネーイス』第10巻のコメンタリー。巻末に注と語彙がついている。)

この教材の本体前半にはテキストが載っている。後半は個々のフレーズや単語について、文法的な解説が施されている。たとえば、カエサルの『ガリア戦記』だと、巻ごとに一冊の本がある。第5巻46節の”litteris acceptis” については、「これはablative absolute。主語に当たるカエサルが「手紙を受け取ると」と訳す」、みたいなことが書かれている。学習者としてablative absolute(日本語訳は「絶対的奪格」)て何だったっけ?と思えば、該当箇所を文法書で調べればいい。

文法をある程度終えたら、この手の教材を使って丁寧に一冊を最後まで読み終えるのがよい。この場合「丁寧に」という部分が重要だ。文法の復習(=知識の穴埋め)を読解を通じて行うやり方なので、丁寧にやらないと意味がない。個人的には、同じ文法の教科書を二度、三度読み返すより(それも大事だと思うが)、今述べたやり方のほうが、「自分の読みたい本を読む」という本来の目的に向かって一歩も二歩も近づく自信が得られるように思う。Experientia docet. は真実である。

追伸 純粋に文法をより詳しく網羅的に学びたい人の場合、日本で書かれた教材をあれこれ読むより、欧米の文法書を読むことをお勧めしたい。

なお、ラテン語講習会ではキケローの講読クラスを定期的に開催していますので、ご都合があえばぜひご参加下さい。
>>講習会の予定
>>ラテン語講習会~文法は地図、講読は旅である!

関連記事: