お山の絵本通信vol.203

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『からすのせっけん』

むらやまけいこ/文・やまわきゆりこ/絵、福音館書店1984年

「からすのせっけん」−この絵本は私が幼稚園時代に母に読んでもらった一冊です。お風呂に入ることがなぜか嫌いだった私。少しでも楽しく入ってもらいたい、お風呂の気持ち良さを感じて欲しいと何回も読んでもらったように思います。この絵本の中に出てくる「じゃぶ じゃぶ ぷるる ぷわららら」というフレーズがとても気に入り、大きな声で口ずさみながら体を洗ったことを覚えています。また時には母や妹と一緒に口ずさみ、お風呂がいつの間にか楽しみになり、大好きになったことも思い出しました。「じゃぶ じゃぶ ぷるる ぷわららら」というこの魔法の言葉により、幼少時代の私も「からす」と共に気持ち良さを感じていたのだろうと思います。

そして、「からす」はこの気持ち良さを伝えようと森の動物たちにも「せっけん」を貸してあげることにします。ねずみ、りす、うさぎ、さる、くま、ぞうと順番に洗い、ぞうが体を洗い終えると「せっけん」はもうどこにもありません。「せっけん」を使うとなくなってしまうということを知った「からす」でしたが、森の動物たちみんながきれいになり良かったと喜ぶのでした。その姿に自分のことだけでなく、友達のことも考えているなということ、みんなで同じ体験を行い、楽しみを仲間と分かち合っている素晴らしさを感じました。

子どもたちも、幼稚園生活の中で自分のことばかり考えず、お友達の思いにも気付いて動く姿がたくさんあります。おもちゃを「貸して」と言われた時に貸してあげたり、「一緒に遊ぼう」と誘う姿が見られています。また、先日の発表会では、当日全員やっと揃うことが出来、「今日はみんなで踊れるね」「やったぁ」という言葉が子どもたちから聞こえてきました。終わった後の子どもたちの顔は今までで一番キラキラとしていたことはいうまでもありません。これからも良いことも悪いこともみんなで共有し、学びの場にしていきたいと思いました。そして仲間がいるからこそ湧き出てくる思いがあり、思いやりの気持ち、みんなで気持ちを一つにしていろいろなことを乗り越えていく力を大切に保育をしていきたいと改めて思いました。

最後に「せっけん」はなくなってしまいましたが、仲良しの動物たちに心が温まり、今にも「ほわーん ほわーん」とせっけんの良い香りがしてきそうなお話でした。

文章/Tomomi先生