お山の絵本通信vol.128

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『モグラくんとセミのこくん』

ふくざわゆみこ/文・絵、福音館書店2001年

今回、私が紹介させて頂く本は『モグラくんとセミのこくん』という絵本です。少し季節外れですが、モグラとセミという一見関わりの無さそうな生き物達のお話が気になり、思わず手にとってしまいました。

2人の出会いは土の中。お散歩中のモグラくんがトンネル遊びをしていたセミのこくんと出会います。2人はすぐに仲良しになり、一緒に暮らし始めます。2人は様々な季節を共に過ごしていきます。冬は枯れ葉の布団で眠り、春にはたんぽぽの根っこで遊び、夏には地下の泉に映った自分達の顔を見て、そして秋にはさつまいもを使ってごちそうを作ったり…。一緒に過ごしていく中で、ある日セミのこくんの背中にひびが入り、中から少し大きくなったセミのこくんが出てきました。そこでモグラくんは、来年もう一度セミのこくんが殻を脱ぐとセミになって、土の中から空へと飛んでいってしまうことを知ります。それから2人はもう1年季節を共にします。そしてまた夏が来た時、セミのこくんに変化が訪れます。部屋を狭く感じたり、息苦しくなったりしてとうとう動かなくなってしまいました。慌てたモグラくんは急いでセミのこくんを土の上に連れていきました。するとゆっくりセミのこくんは木を登り、“セミ”になっていくのです。

この絵本を読んでいく中で、幼稚園で見る四季とはまた違った土の中の四季を感じることが出来、普段私達の足の下では様々な生き物がこのモグラくんとセミのこくんと同じ様に暮らしているのかな? と楽しくなりました。そして、2人の友情にも心動かされました。本当はセミにならないといけないけど大好きなモグラくんと一緒にいる為、土の中に残ろうとするセミのこくん。セミのこくんとずっと一緒にいたいけど、セミになる為の準備をし出したセミのこくんの背中を押してくれたモグラくん。お互いがお互いを思いやる姿はとても心が温まりました。このお話を子ども達と読み終えた時にふとあるお友達が「夏にセミが沢山鳴いているのはモグラくんにお話しているからなのかな?」とお話してくれました。すると次々に「だからあんなに元気な声なんだ!」「お家の中にいても聞こえてくるもんね。」と大盛り上がりでした。子ども達の声を聞いて改めて絵本は色々なことに気付かせてくれたり、様々な思いをプレゼントしてくれる素敵なものだなと思いました。子ども達にも是非モグラくんとセミのこくんの様にお互いを想い合えるお友達との日々を大切にしてもらいたいなと思いました。

文章/Yuuka先生