お山の絵本通信vol.119

──なつかしい絵本と先生のこえ──

『ひとりでおとまりしたよるに』

フィリパ・ピアス/文、ヘレン・グレイグ/絵、さくまゆみこ/訳、徳間書店2014年

この絵本を読んだ時、まるで自分の小さい頃を見ているように思いました。それと同時に、自分が幼稚園へ行っていた頃の気持ちも思い出させてくれました。

主人公のエイミーは、ある日おばあちゃんの家へ泊まりに行くことにしました。初めてのお泊まりには、大事な宝物を3つ持って行くことにします。昼間は楽しく過ごすエイミーも夜になるとお母さんを思い出し、寂しくなるのです。そこでエイミーは自分を励ますためにも宝物を取り出します・・・。

私が初めて祖父母の家へ泊まりに行ったのは、3歳の頃でした。妹が生まれるので、その間は祖父母の家に泊まって過ごしていました。楽しい事が沢山の祖父母との時間は大好きでしたが、私もエイミーと同じように夜になると『おかあさんに会いたい!』と涙をして、祖父母を困らせていたようで、今でも遊びに行くとその話を聞かされることがあります。『おじいちゃんとおばあちゃんがいるから大丈夫やもん。1人でも泊まれるもん。』という気持ちは強く持っていたものの、『お母さんに会いたい!』という気持ちに負けてしまう時が何度かありました。

その気持ちは、幼稚園でも同じでした。私は、2年保育で年中組から幼稚園へ通っていたのですが、最初の何ヶ月間かは、母と離れる際にいつも涙を流していました。担任の先生に抱っこをされて『大丈夫、大丈夫!』と声を掛けてもらっていたことを今でも覚えています。園で過ごしている時も、『お友達がいるから大丈夫!』と思っている反面、『お母さんに会いたくなってきたなぁ。』と思うことが何度かありました。

その中でも印象的だったのが、いちご狩りへ行った日のことです。その日も涙を流しながら『いってきます』をした私でしたが、いちご狩りに向かうときにはすっかり元気になっていました。バスの中で隣に座っていた友達がお母さんに会いたくなったとしょんぼりしている姿を見て、私が励ましたようで、それを見ていた担任の先生から『ちいちゃん、もう寂しくなくなったんやね!すごいなあ!』と笑顔で言ってもらえたことが今でもとても心に残っています。その言葉は少し照れくさくもあり、『みんながいるから大丈夫!』という自信にもなったように思います。

お山の幼稚園でも、涙をしながら『行ってきます』をしたり、急にお母さんに会いたくなる子ども達の気持ちはとてもよく分かります。園に行ったら楽しいのだけれど、ちょっぴり寂しいという気持ち。朝は涙をしていても、あっという間に笑顔になる姿を見ると、私もとても嬉しい気持ちになります。  

この絵本の最後には、『みえなくても、みんなちゃんとそこにいるんだよね』という1文があります。お山の子ども達にも、1人じゃないよ。みんながいるから大丈夫。ということを、日々過ごしていく中で伝えていければと思いました。 

文章/Chinami先生